理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: G-P-07
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ポスター発表
客観的臨床能力試験を用いた療法士教育における卒後教育の再考
渡 哲郎本谷 郁雄志村 由騎金田 嘉清櫻井 宏明
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キーワード: 卒後教育, OSCE, 医療技術
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抄録
【はじめに、目的】近年、養成校増加に伴い療法士数は飛躍的に増加し、臨床現場における経験年数の若年化という状況を生じている。当院リハビリテーション科においても新人療法士は全体で30%を占めており、院内勉強会や経験者による臨床指導の研修を行っている。しかし、教育者となる経験年数の高い療法士が少ないことや、様々な指導により教育方法が統一されないという問題から、新人療法士の臨床能力の把握と指導方法の標準化が必要と考えた。そこで、客観的臨床能力試験(Objective Structured Clinical Examination:以下OSCE)を導入し、新人療法士の臨床能力の把握、問題点抽出から臨床指導方法を検証したので報告する。【方法】対象は平成24年度入職の新人療法士19名(理学療法士13名、作業療法士6名)。平均年齢22±0.5歳。OSCEは藤田保健衛生大学医療科学部リハビリテーション学科の作成した療法士版OSCEを使用した。評価者2名、模擬患者1名にて行った。課題は関節可動域測定(以下:ROM)・徒手筋力検査(以下:MMT)・起居動作補助・移乗動作補助の4課題とした。OSCEは4、5、6、9月に施行した。4月評価後、対象者19名をA・B二群に分け、A群はOSCEからの問題点を基にした臨床技術教育を行い、B群は当院研修制度のみ行った。5月評価後、A・B群で教育方法を交代させ、6月評価を行った。3ヶ月後の9月に教育の定着度を評価するため確認評価を行い、両群間の結果を比較した。統計学的分析は二元配置分散分析後にTukey-Kramer多重比較検定を用い、有意水準は0.05未満とした。本研究の臨床技術教育方法については、技術教育に関する先行論文と教育論、学習理論を参考にし、要点・キーポイントを口頭で説明した後、観察学習として経験者によるデモンストレーションを行い、次に新人療法士同士で課題を実践し、経験者からのフィードバックを行う流れを取った。教育頻度は2回/週の1ヶ月間で計8回、1時間/回で計8時間とした。比較対象となる研修制度は、全職員の合同勉強会、症例検討会、経験者からのマンツーマンの臨床指導とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に則り当院倫理審査委員会の承認を得て行った。また、本研究における対象者に研究説明を行い、同意を得て全てのデータを使用した。【結果】4月:A群得点率ROM:58.2±20.8%、MMT:65.7±14.6%、起居動作補助:35.7±21.3%、移乗動作補助:58.3±27.9%、B群ROM:56.9±17.5%、MMT:56.9±13.7%、起居動作補助:38.9±22.2%、移乗動作補助:55.6±22.4%で全ての課題に有意差は無かった。5月:A群ROM:91±10.4%、MMT:92.6±4.6%、起居動作補助:75.4±12%、移乗動作補助:83.7±12.8%、B群ROM:73.3±16%、MMT:64.2±19.4%、起居動作補助:42.9±26.8%、移乗動作補助:55.3±21.5%で全ての課題で有意差を認めた。6月:A群ROM:92.5±6.3%、MMT:88.9±8.9%、起居動作補助:90±7.7%、移乗動作補助:89.2±11.2%、B群ROM:89.5±7.8%、MMT:87.2±8.6%、起居動作補助:86±15%、移乗動作補助:87.2±9.9%で全ての課題で有意差は無かった。9月:A群ROM:91.5±5.7%、MMT:87.7±7.1%、起き上がり動作補助・誘導:76.6±12.9%、移乗動作補助・誘導:79.2±13.7%、B群ROM:85.2±10.7%、MMT:84.4±10.3%、起き上がり動作補助・誘導:73.9±21.1%、移乗動作補助・誘導:79.7±14.2%であり、全ての課題において両グループの得点率に有意差はみられなかった。また、最終OSCE結果と比較して、両グループは全ての課題に有意差はみられなかった。【考察】A・B群の両群でOSCEからの問題点を基に行った臨床技術教育後にて得点率の向上を認めた。基本的な臨床能力を早期に向上させるには、その臨床技術に関する技術教育を行う必要性が示唆された。特に、動作の補助・誘導課題に関して、研修制度では得点率向上は認めず、技術教育で向上を認めたことから、補助・誘導は技術が必要であり、その方法等を早期から技術教育で指導を行うことが重要であると考えられた。また、動作の補助・誘導課題は9月の保持確認評価のOSCEにて有意な差はみられなかったものの、若干の得点率低下を認めたことから、技術教育を行うのみでなく、臨床現場にてその補助・誘導技術を活用していかなければ技術は定着していかない可能性が示唆された。そして、OSCEから得られる問題点を基に行う臨床技術教育は新人療法士の臨床能力の向上と均一化を進めることの一助になると考えられた。【理学療法学研究としての意義】本研究では新人療法士における卒後教育方法について検討を行った。今回、OSCEを用いることで新人療法士の臨床能力の問題点を把握し、その問題点に対する臨床技術教育の必要性が示唆された。本研究において、臨床現場での療法士卒後教育の再考に繋がると考えている。
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© 2013 日本理学療法士協会
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