理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: G-P-07
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ポスター発表
胸部レントゲン写真の評価者間における違いについて
山根 主信桑原 陽子福田 珠里高尾 聡星野 なつき
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キーワード: 呼吸理学療法, X線画像, 評価
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抄録
【はじめに、目的】胸部レントゲン写真(以下胸部写真)は胸部疾患の診断や治療の効果判定においては欠かすことのできないものである。また、呼吸理学療法においても無気肺や炎症部位の評価を行う場面や、理学療法介入前後などで経時的な評価を行っていくのに有用である。しかし、画像読影に関する教育は十分とは言えず、各セラピストによって読影は独自の方法で行うことが多い。このため胸部写真から得られる情報は、各セラピストの読影能力によって異なってしまう。読影において見落としを少なくするためには、系統的な順序に沿って読影することが重要であるといわれており、今回、この点をふまえ系統的な読影を助ける独自の胸部写真評価表(以下評価表)を作成した。そしてこの評価表を使用し、胸部写真を複数のセラピストが同時に読影した場合に、どのような点で読影結果に差が生じやすいかということについてまずは調査を行ったので報告する。【方法】平成24年9月に当院にて「胸部レントゲン読影に関する勉強会」を開催し、この勉強会に参加したセラピスト(理学療法士12名、作業療法士2名、言語聴覚士1名)を対象とした。セラピストの経験年数は2~20年(平均6.3年)、日頃の胸部写真読影数は0~30枚/週(平均6.5枚)、画像に関する勉強会への参加は0~4回(平均0.9回)であった。勉強会では、正常胸部写真についての解剖学的な説明や、胸部写真にみられやすい異常所見例について説明を行った。そして勉強会終了時に、2つのケースについての胸部写真を参加者全員で同時に読影し、その結果を評価表に記入してもらった。今回作成した評価表は独自に作成したものであり、評価表は1.撮影条件、2.人工物の有無、3.上腹部の異常、4.頚部・両腕の異常、5.胸郭の異常、6.縦隔の異常、7.心陰影の異常、8.横隔膜の異常、9.肺野透過性亢進の有無、10.肺野陰影の有無、の10項目について、それぞれ「異常なし」または「異常あり」などの判断をチェックし、異常のある場合にはどのような異常かを記載する様式となっている。読影結果の違いを調査するために、参加者が記入を終えた評価表を回収し、「異常なし」と「異常あり」のどちらにチェックをしているか人数を確認し、それぞれ人数の比率を算出した。また、チェックがどちらにもない場合や、どちらにもある場合には「判断困難」とし、「判断困難」が多かった項目についても調査した。【倫理的配慮、説明と同意】参加者に対し今回の調査報告を公表することについて説明し、その同意を得た者のみより評価表を回収した。また評価表は無記名とした。【結果】評価表回収率は100%(15/15名)であった。ケース1について、ばらつきがとくにみられたのは「縦隔」に「異常なし5名(33.3%)」と「異常あり10名(66.7%)」で、次いで「横隔膜」に「異常なし4名(26.7%)」と「異常あり9名(60%)」であった。また「判断困難」とした人数が多かった項目は「撮影条件(5名)」、「肺野陰影の有無(5名)」についてであった。ケース2について、ばらつきがみられたのは「縦隔」に「異常なし7名(46.7%)」と「異常あり6名(40%)」で、次いで「心陰影」に「異常なし7名(46.7%)」と「異常あり6 名(40%)」であった。また「判断困難」とした人数が多かった項目は「撮影条件(10名)」、「上腹部の異常(4名)」の順であった。【考察】今回の対象者では、胸部写真の読影において「縦隔」、「横隔膜」、「心陰影」については異常有無の判断にばらつきが出やすく、「上腹部の異常」については判断が難しい傾向にあり、これは読影においては肺野の評価が中心で、肺野外の評価に慣れていないことの影響が考えられた。また「立位正面撮影かポータブル撮影か」という撮影条件を「判断困難」とする者が多かったことついては、臨床現場では撮影条件はフィルムに明記されていることが多いため、撮影条件の違いを判断する機会が少ないからではないかと考えた。そして「肺野陰影の有無」についても判断が難しいという結果が得られたが、肺野は胸部写真において最も変化が多彩であり、その変化を陰影の有無だけでは正確に表現できなかったことが影響しているのではないかと思われた。以上より、正常か異常かの判断がつきにくい項目については、今後も読影に関する勉強会を開催する中で重点的に解説を行っていく必要があると思われた。【理学療法学研究としての意義】臨床現場の中で目にする機会の多い胸部レントゲン写真を、系統的に評価して見落としを防ぐことは正しく患者を評価・治療するうえで重要なことである。胸部写真の読影能力向上を目的とした評価法開発やその使用は、医師など他職種との情報共有や連携において理学療法士が患者に関わる意義を示すことにつながるのではないかと考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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