理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-P-09
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ポスター発表
パーキンソン病のサブタイプによる静的立位バランスの差異
堀場 充哉山下 豊佐橋 健斗岡 雄一大喜多 賢治松川 則之和田 郁雄
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抄録
【背景】 パーキンソン病(PD)の進行に伴い,姿勢反射障害,歩行障害などの症状が出現する.これら軸症状とよばれる運動症状は,ドパミン補充療法による改善効果が不十分である.また,ADL,QOLの阻害因子となることも報告されており,本症のバランス機能を評価する意義は大きい.これまで,PD患者の姿勢安定性に関して,客観的評価手法である足圧中心(COP)を用いた研究は散見されるが,PD患者では健常者よりも動揺が少ないとする報告がある一方で,増大しているとの報告もある.このような矛盾は,PD患者の臨床症状や治療内容の差異が影響していると考えられる.そこで,PDのサブタイプによる姿勢不安定性の差異を明らかにするため,PD患者を臨床症状から分類するとともに,レボドパ投与前後のCOPを計測し比較検討した.【対象】 進行期PD患者75例(男性37例,平均年齢63.7歳)を対象とした.罹病期間は平均10.2年,Hoehn & Yahr重症度分類のIQRは,オフ時4.1,オン時3.0,UPDRSスコアは,オフ時 平均58.6点,オン時27.5点であった.また,壮老年期健常者17名(男性8名,平均年齢61.2歳)をコントロール群とした.【方法】 評価は,PD治療薬を休薬したオフ条件とレボドパ静注後のオン条件で実施した.臨床症状の評価には,UPDRS,Mini-mental state examination(MMSE),Trail making test(TMT),Frontal assessment battery(FAB)を使用した.サブタイプは,発症年齢,進行度,MMSE,オフ条件でのUPDRSの振戦,固縮,動作緩慢,軸症状(part II 13-15,III 27-30)の各スコアから,クラスター分析にて4つのクラスター(Cl)に分類した. また,姿勢不安定性は,ニッタ社製マットスキャンを使用し,安静開眼立位(踵間隔7cm,足部15度外旋位)でのCOPを60s間測定した.姿勢不安定性のパラメータとして,前後方向(AP),内外側方向(ML)それぞれの平均動揺速度(V),動揺振幅の実効値(RMS)を算出した. サブタイプ間において,臨床症状,COPパラメータを比較するとともに,オフ,オン条件でのCOPパラメータの変化も比較した. 統計は,サブタイプ間の比較に一元配置分散分析,Kruskal-Wallis検定,scheffeおよびSteelの多重比較を行った.また,オフ,オン条件でのCOPパラメータの比較は,対応のあるt検定を用い,危険率5%未満を有意とした.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は当院倫理委員会にて承認され,説明と同意を得て実施した.ドパストンの静注は,共同研究者の医師により実施された.【結果】 1)PDのサブタイプは,寡動・固縮・軸症状タイプ(Cl-1),若年発症・緩徐進行タイプ(Cl-2),高齢発症・認知機能低下・急速進行タイプ(Cl-3),高齢発症・緩徐進行タイプ(Cl-4)に分類され,オフ条件の運動症状はCl-1で最も悪かった.特に軸症状は,Cl-1で平均16.2点,Cl-2で8.1点,Cl-3で11.9点,Cl-4で平均8.8点とCl-1,Cl-3で有意に悪かった.  2)MMSEは,Cl-3で平均24.8点と認知機能は境界域であったが,Cl-1,Cl-2に比べ有意な低下を認めた.また,TMT-B/AもCl-3で3.6と有意に高値を示し,最も遂行機能が低下していた. 3)オフ条件では,COPの動揺速度,動揺振幅がCl-1(AP-V:平均7.9mm/s,AP-RMS:6.8mm,ML-RMS:4.3mm),Cl-3(AP-V:平均9.9mm/s,ML-V:11.2mm/s,AP-RMS:6.6mm,ML-RMS:6.2mm)でコントロール群(AP-V:平均4.9mm/s,ML-V:6.3mm/s,AP-RMS:4.4mm,ML-RMS:2.6mm)よりも有意に高値を示した. 4)オン条件では,オフ条件に比べCl-2(オフ/オン,AP-RMS:平均6.4/9.2mm,ML-RMS:3.0/4.9mm),Cl-3(オフ/オン,AP-RMS:平均6.6/9.0mm,ML-RMS:6.2/8.7mm),Cl-4(オフ/オン,AP-RMS:平均5.4/6.3mm,ML-RMS:4.1/5.6mm)の動揺振幅が有意に増大した.【考察】 PDのサブタイプに関する先行研究では,「固縮・寡動・姿勢不安定性・歩行障害」,「若年発症・緩徐進行」,「高齢発症・急速進行」,「振戦優位」に分類されている.本研究では,振戦優位タイプは同定できなかったが,他の3タイプについては,先行研究と同様の臨床的特徴を示した. オフ条件の動揺振幅は,いずれのサブタイプも健常者より増大している.サブタイプ間の差異は側方動揺振幅において顕著であり,高齢発症・認知機能低下・急速進行タイプで最も増大していた.また,寡動,固縮,軸症状が最も重度であった寡動・固縮・軸症状タイプよりも高値を示す傾向にあり,認知機能や遂行機能の関与も予測される.一方,レボドパは,いずれのサブタイプにおいても側方不安定性を増大させる傾向にあり,レボドパは姿勢制御に負の効果をもたらすことが示唆された.【理学療法学研究としての意義】 姿勢不安定性の生じやすいサブタイプが明らかになったことで,姿勢制御障害の理学療法を検討する基礎情報となりうる.
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© 2013 日本理学療法士協会
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