理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-20
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ポスター発表
人工膝関節置換術後における退院時TUGの予測因子と検査特性
内田 茂博玉利 光太郎森田 伸田仲 勝一伊藤 康弘藤岡 修司板東 正記刈谷 友洋小林 裕生山田 英司有馬 信男山本 哲司
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抄録
【はじめに、目的】 現在,在院日数の短縮やリハビリ期間の制限により人工膝関節置換術後患者に対し長期的な介入が困難となっている.そのため,術前より術後早期の運動機能に寄与している因子を明確にし,早期退院が可能な症例を予測することで,不必要な入院期間を短縮させることが可能になると考えられる.本研究では,機能的移動能力を測定するTimed Up and Go test(以下,TUG)をアウトカムとして,術前の身体・精神的機能と術後2週のTUGとの関係を明らかにし,抽出された予測因子の検査特性を示すことを目的とした.【方法】 研究デザインは前向きコホート研究であり,変形性膝関節症と診断されTKAまたはUKAが施行された患者を対象とした.術前に独立変数を計測し,従属変数は退院前である術後2週にTUGを計測した. 対象は,当院整形外科にて手術が施行された43名(男性11名,女性32名,平均年齢74.9±6.5歳)とし,測定項目は,独立変数として,1)疼痛,2)術側膝関節可動域(伸展・屈曲),3)術側等尺性膝伸展筋力,4)自己効力感(Self-Efficacy for Rehabilitation Outcome Scale:以下,SER)の4項目とした.また,交絡因子は,1)被験者属性因子(年齢,性別,BMI,エクササイズ習慣),2)TKA例とUKA例,3)片側例と両側例,4)非術側等尺性伸展筋力,5)非術側膝関節可動域(伸展・屈曲)を術前に計測した.統計学的分析では重回帰分析を用い,変数選択法はステップワイズ法により行った.また,交絡因子を分析モデルに強制投入し調整を行った.なお事前に単変量解析によって変数選択を行い,有意水準が0.20を下回る変数のみを重回帰モデルに投入して分析を行った.さらに,Whitneyら(2005)の報告を参考にしてTUGが15.0秒以上の者を遅い群,15.0秒未満の者を早い群として2群に分け,重回帰分析によって抽出された因子について receiver operating characteristic(以下,ROC)曲線を用いてカットオフ値を求め,各検査においてTUGが15.0秒未満となる予測モデルを立て感度・特異度を算出した.統計ソフトは,SPSS Statistics 19.0を使用し,有意水準は5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 当院の倫理委員会の承認を得た.対象者には研究についての説明を行い,十分に理解した上で書面にて同意を得た.【結果】 単変量解析によって抽出された変数はSER,安静時痛であった.重回帰分析の結果(p<0.001,R2=0.556),術後2週目のTUGを説明する変数は,術前のSER(p<0.001,β=-0.571)と安静時痛(p<0.001,β=0.406)であった.交絡因子を投入後の重回帰分析の結果(p<0.001,R2=0.703)も術前のSER(p=0.001,β=-0.407)と安静時痛(p=0.001,β=0.413)が抽出され,それ以外に交絡因子である非術側膝伸展可動域(p=0.027,β=-0.257)が有意であった.また,ROC曲線の曲線下面積は,SERが0.82(p=0.001),安静時痛が0.59(p=0.371),非術側膝伸展可動域が0.62(p=0.213)であった.また,感度と特異度の和が最も大きくなる点をカットオフ値とした場合,SERは88.5点,安静時痛は1.5,非術側膝伸展可動域は-2.5°であった.さらにこの時の検査特性は,SERでは感度64.3%,特異度96.6%,安静時痛は感度41.4%,特異度78.6%,非術側膝伸展可動域では,感度78.6%,特異度41.4%であり,事前確率を30.2%とした場合の事後確率はそれぞれSER90.6%,安静時痛45.6%,そして非術側膝伸展可動域は36.6%であった【考察】 術前に自己効力感が88.5点以上,安静時痛がVASで1.5以下,または非術側膝伸展可動域が-2.5°以下のものは,41.4%~90.6%の確率でTUGが術後2週の時点で15.0秒未満となることが示唆された.また被験者属性因子や非術側の筋力,TKA・UKAの別,片側・両側の別といった要因からも独立してこれらの因子が術後2週のTUGに関連することが示唆された.本研究の限界として,抽出された因子の妥当性についてはRCTの実施によって検討する必要がある.【理学療法学研究としての意義】本研究で得られた知見は,急性期のTKA術後患者のうち運動機能が通常のパスよりも早期に望ましいレベルに達する症例を把握することで,入院期間の短縮を検討する基盤となると考えられる.
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© 2013 日本理学療法士協会
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