理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-20
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ポスター発表
人工膝関節全置換術後患者に対する主観的評価表の作成と妥当性の検討
石川 明菜平野 和宏鈴木 壽彦五十嵐 祐介田中 真希姉崎 由佳樋口 謙次中山 恭秀安保 雅博
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抄録
【はじめに、目的】当大学附属4病院リハビリテーション科では人工膝関節全置換術(以下TKA)を施行した患者の治療および評価の標準化に向け評価表およびデータベースを作成し、H22年4月より運用を開始している。今回作成した評価表は身体機能評価表と患者の主観的評価による問診表であり、経時的にデータが蓄積できるよう評価時期を術前、術後3週、8週、12週に設定している。問診表は「生活動作」16項目、「疼痛」8項目、「満足度」の3つの下位尺度からなる健康関連QOL(Health-Related Quality of Life:以下HRQOL)の自己評価尺度として独自に作成した。下位尺度である「生活動作」はTKA患者に該当しそうな日常生活動作から抽出し項目を設定した。各下位尺度における信頼性については第47回日本理学療法学術大会において高い内的整合性が確認されたことを報告している。今回、問診表の妥当性を検討することを目的とし、下位尺度である「生活動作」についての妥当性を検討した。【方法】対象はH22年4月からH24年8月までに当大学附属4病院で変形性膝関節症(以下膝OA)と診断されTKAを施行し、術前もしくは術後のいずれかの時期に「生活動作」全16項目回答可能であった症例とした。術前に測定した群を術前群、術後3、8、12週のいずれかで測定した群を術後群とし、術前群は166例(男性37例、女性129例、年齢74±7歳)、術後群は499例(男性101例、女性398例、年齢74±7歳)であった。方法は問診表のデータを使用した後方視的調査である。評価項目は「生活動作」16項目、1)寝起き、2)着替える、3)洗面動作、4)トイレ動作、5)座り仕事または家事、6)立ち仕事または家事、7)階段を昇る、8)階段を降りる、9)靴下をはく、10)足の爪を切る、11)荷物を持つ(買い物)、12)歩く、13)お風呂に入る、14)床の物を拾う、15)転ばずに生活する、16)歩き以外の移動動作とし、各項目を5点「楽に出来る」~1点「できない・やっていない」の5段階で評価した。統計学的分析としてSPSS ver.19.0 for Windowsを用い術前および術後において因子分析を行った。推定法には最尤法を用い、因子の回転には直接オブリミン法を用いた。また因子数の決定はガイザーガットマン基準に従い因子を抽出した。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は当学の倫理委員会の承認を受け、ヘルシンキ宣言に則り行った。【結果】術前、術後とも2因子が抽出された。術前は第1因子として7)、8)、12)を除く13項目が因子負荷量0.39~0.90、寄与率59.9%、特に項目2)~4)、13)~15)が0.8以上の高い因子負荷量を示した。第2因子として項目7)、8)、12)が因子負荷量0.43~0.94、寄与率9.2%を示した。術後は第1因子として項目5)~16)が因子負荷量0.50~0.87、寄与率59.5%、特に項目6)、7)、11)、12)が0.8以上の高い因子負荷量を示した。第2因子として項目1)~4)が因子負荷量0.77~0.92、寄与率9.9%を示した。KMO測度は術前0.928、術後0.939、バートレットの球面性検定は両者ともp<0.01であり、因子分析の適用は保証された。【考察】術前では身の回り動作を中心とした項目が第1因子と関連を示したことから、第1因子は「身の回り動作」を、第2因子は歩行や階段動作と関連がみられたことから「移動動作」を表す因子と考える。これは、術前群は重度OA患者が多く活動性が低いことが予測されるためと考える。一方、術後では術前と反対に第1因子は「移動動作」を、第2因子は「身の回り動作」を表していると考える。これはTKA施行により身体機能が改善され、活動性の高い「移動動作」がより重要な因子として抽出されたと考える。また、術前術後において2因子のいずれかに対し0.2以下の因子負荷量を示した項目がないことから、設定した項目の削除は必要ないと考える。本評価表は、TKA症例において、術後に必要と考える生活動作を抽出し項目設定を行なった。因子分析により術前後において「身の回り動作」、「移動動作」という生活動作を表す2因子による群構造が示されたことから、因子妥当性が認められたと考える。今後は項目の順序性について検討し構成概念妥当性を確認すること、また他の下位尺度についても同様の検討を行い、問診表全体の妥当性を確認することが課題である。【理学療法学研究としての意義】TKA患者に対し身体機能とHRQOLを同時に評価している報告は少ない。今回新たに作成した評価表の妥当性を確認した本研究は、TKA症例に対する多角的な評価や理学療法治療の標準化に意義があると考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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