理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-P-16
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ポスター発表
脳卒中患者における運動負荷時の循環動態は併存疾患に依存するか?
運動負荷方法の違いによる検討
藤田 俊文岩田 学
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抄録
【目的】脳卒中患者では疾患特有の機能障害や発症後の活動性低下による筋力低下,全身持久力低下がみられるため,対象者の身体機能や体力レベルを十分把握した上で運動を適応することが重要である。そのために種々の体力評価を実施し,対象者の身体機能や運動能力を定量化することが求められる。しかしながら,脳卒中患者は高血圧症や心疾患など運動負荷により増悪する可能性がある疾患を併存している場合が多いため,運動時のリスク管理は重要となる。特に運動前後の血圧管理や運動中の心電図モニタリングはリスク管理上で重要な指標である。そこで本研究では運動負荷時の循環動態について,高血圧,糖尿病,脂質異常症の有無や重複によりどのような特徴を示すか明らかにすることを目的とした。【方法】対象は入院中の脳卒中片麻痺患者19名(男16名,女3名)で平均年齢は57.8±9.9歳であった。また併存疾患は,高血圧症15名,糖尿病11名,脂質異常症9名であり,これらは重複する対象者がみられた。なお,対象者は脳血管疾患初回発症で片麻痺を呈し,医学的に状態が安定した回復期の患者を対象としており,重篤な呼吸循環器系疾患および下肢の整形外科的疾患を有するものは対象外とした。運動負荷にはリカンベント型エルゴメータ(三菱エンジニアリング社StrengthErgo240)を使用した。運動負荷手順は,1)ウォーミングアップ(10Wで3分間,50回転/分を維持),2)等速性運動(50回転/分)にて最大努力にて5回転のペダリング動作(運動時間は6秒),3)等張性運動(先行研究をもとに対象者別に至適負荷量を設定)にて9秒間(0~6秒はランプ負荷,6~9秒は定常負荷)の最大努力でのペダリング運動を行った。安静時から運動負荷終了まで常時心電図モニタリングを実施し,心電図に異常があった際にはアラームが鳴る設定とした。血圧測定は,安静時,1),2),3)それぞれの直後に実施した。運動順序は1),2),3)とし,次の運動は心拍数と血圧が安静時と同程度まで回復してから実施した。心拍数の測定については,2)・3)が短時間の運動で瞬間的な上昇と下降を示すため運動直後の安定した心拍数の測定は難しいため,測定機器の設定で心拍数の上限が120bpm以上になった場合はアラームが鳴るようにした。また,運動中止基準はAndersonの基準の土肥変法に従った。血圧測定では,収縮期血圧と拡張期血圧を指標とし,さらに平均血圧(=(収縮期血圧-拡張期血圧)/3+拡張期血圧)を算出し指標とした。各運動負荷後の併存疾患の有無または重複による血圧変動の差を明らかにするため,安静時,各運動直後の収縮期血圧,拡張期血圧,平均血圧について,高血圧のみ,高血圧と糖尿病,高血圧と脂質異常症の有無の3つに分類し,それぞれの分類で血圧変動の差を,対応のないt検定またはMann-Whitneyの検定を実施した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は所属施設および協力施設の倫理委員会の承認後に実施し,対象者へ研究の趣旨と内容について十分説明し同意を得た上で行った。【結果】各運動中および運動終了後に体調不良を訴えるものはいなかった。高血圧症の有無では統計学的有意差は認められなかったが,高血圧症を有する者の方が1)後の収縮期血圧で高い傾向(p=0.06)となった。高血圧症と糖尿病を有する場合では,2)後の収縮期血圧で有意に高い結果となり,それ以外は有意な差は認められなかった。高血圧症と脂質異常症を有する場合では,各運動負荷後の拡張期血圧と平均血圧で有意に高い結果となった。【考察】本研究では心拍数が120bpmでアラームが作動するように設定したが結果として作動せず,また運動後の回復もスムーズであった。本研究で実施した2)・3)のような短時間の運動負荷では,心拍数の上昇の程度を把握することと,運動終了後の回復状況を把握することが重要であると考えられた。また高血圧を有する場合ではウォーミングアップ程度の負荷でも上昇しやすい傾向を示し,特に脂質異常症が重複している場合は各運動負荷後の拡張期血圧と平均血圧が高い結果となり,これは動脈の伸展性の低下や末梢血管抵抗が増加しているものと推察された。以上より運動負荷時の循環動態は併存疾患の重複に依存していることが示唆された。加えて運動負荷時のリスク管理としては,心拍数変動と回復の程度を確認する,収縮期血圧と拡張期血圧に加えて平均血圧の変動を指標とする,高血圧症の有無に加えて糖尿病や脂質異常症の重複を確認する,ことが重要であり,さらに,服薬状況を確認し降圧剤の影響を考慮した上で循環動態の反応性を十分観察する必要があると考える。【理学療法学研究としての意義】脳卒中患者へ運動負荷を与える上で,循環動態の変化を捉えることの臨床的意義を示すことができたのは重要なポイントであると考える。
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© 2013 日本理学療法士協会
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