理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-O-14
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一般口述発表
リアライン・バランスシューズ足関節用を用いたトレーニングが足関節捻挫後の中・高校生女子バレーボール選手のパフォーマンス改善に及ぼす効果
杉野 伸治武藤 雄亮西浦 知世濵田 孝喜伊藤 一也秋山 祐樹貞松 俊弘土居 満窪田 智史小林 匠蒲田 和芳
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抄録

【はじめに、目的】 バレーボールのスポーツ外傷調査によると、足関節外傷が占める割合は最も高い。Verhagenらの報告では足関節捻挫の占める割合は全外傷・障害の40%であった。ポジション別ではスパイカーが多数を占め、受傷機転としてはジャンプ後の着地の失敗による受傷が59%を占めていた。 バレーボールの競技特性からジャンプ力の向上は勝敗を左右するとともに、選手としての生命線ともいえる。したがって足関節受傷後のジャンプ力向上は選手にとって重要な課題となる。また、パフォーマンスの向上と臨床症状の改善は密接な関係にあると考えられるが、足関節捻挫後に長く症状が残存する例においては、症状消失とパフォーマンス向上の両方を実現する介入が必要である。2次的予防を目的とした介入を含む先行研究は多いが、その選手のパフォーマンスに及ぼす効果は不明であり、コンプライアンスが芳しくないことも問題である。 我々は、足関節の外傷予防を目的として開発されたエクササイズ器具であるリアライン・バランスシューズ足関節用(GLAB社製、以下BS)を用いた15分間の外傷予防プログラムを考案した.本研究では、足関節捻挫の既往のある中・高校生女子バレーボール選手を対象に、BSを用いた運動プログラムの効果を検証することを目的とした。【方法】 研究デザインは無作為化対照試験であり、対象者を無作為に2群に割り付けた。対象者は5年以内に少なくとも1週間以上のスポーツ活動休止を必要とする足関節捻挫の既往があり、バレーボール復帰後1ヶ月以上経過している者とした。 バランスシューズ群(以下B群)には足部のモビライゼーションを目的とした竹踏み、距腿関節内側のモビライゼーションを目的としたニーアウトスクワットを行った後、BSを使用したCKC運動を行った。コントロール群(以下C群)には、従来の足関節機能向上のため広く実施されている1)チューブを用いた足関節周囲筋の筋力トレーニング、2)バランスディスクを用いたバランストレーニング、に加え、3)BSを装着しない状態でB群と同様のCKC運動、を行った.2群ともに1回15分の介入時間で、最低週3回、4週間継続した.測定項目はバレーボールパフォーマンス測定として10mダッシュ、垂直跳び、スパイクジャンプ、反復横跳び、足関節機能テストとして片脚跳び、8の字ホップテスト、サイドホップテストとした。測定は4週間の運動介入の前後に行い、統計学的分析としてt検定を用いて群内および群間の比較を行った。有意水準としてα=0.05を採用した。【倫理的配慮、説明と同意】 貞松病院倫理委員会の承認を得た後、研究内容を説明し同意を得られた者を対象とした。【結果】 B群20名、C群17名の同意が得られた。B群において、バレーボールパフォーマンスおよび足関節機能テストにおいて、介入後に有意な改善が得られた。一方C群では、足関節機能テストのみ改善が得られたのみで、バレーボールパフォーマンスへの影響はなかった。全ての項目において群間差は認められなかった。【考察】 本研究の結果、2群に有意差は認められなかったが、群内ではB群においてのみパフォーマンス向上効果が認められた。本研究では、研究デザインとして無作為化対照研究を採用し、注意深く選択バイアスの除去を行った。また、高いコンプライアンスが両群ともに得られたことも研究結果の信頼性を高めることに貢献した。本研究の限界として、統計学的パワー不足と足関節捻挫の再発予防効果については不明であるといった点が挙げられる。したがって今後は対象者を増やすとともに、運動介入後の足関節捻挫再発に関しても調査していきたい。以上により、BSを用いた足関節外傷予防プログラムは、足関節機能およびバレーボールパフォーマンスの両方に効果的であると結論づける。【理学療法学研究としての意義】 足関節捻挫後の運動介入の効果をみた先行研究では、介入時間の長さや、スポーツパフォーマンスに及ぼす影響が不明であった。今回我々が考案したリアライン・バランスシューズ足関節用を用いた足関節外傷予防プログラムは、短時間、短期間で足関節機能の向上のみでなく、スポーツパフォーマンスの向上をもたらしたことから、足関節捻挫後のリハビリテーションにおいて有益であることが示された。

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© 2013 日本理学療法士協会
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