理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-O-15
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一般口述発表
膝特発性骨壊死に対する骨軟骨移植術後の理学療法
―術後1年間の膝機能―
岡 徹黒木 裕士古川 泰三奥平 修三中川 拓也末吉 誠中川 泰彰
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抄録

【目的】膝特発性骨壊死 (Spontaneous Osteonecrosis of the Knee:以下SPONK)は50歳以上の中高年女性に多く、大腿骨内顆の荷重部に発症する。強い荷重時痛のため歩行困難となる。原因は不明で比較的稀な疾患とされている。当院ではSPONKに対し骨軟骨移植術を施行している。骨軟骨移植術は大腿骨膝蓋関節面辺縁部および顆間窩辺縁から小さな円柱状骨軟骨片を採取し、これを軟骨欠損部に移植する方法である。損傷軟骨のみでなく軟骨下骨の修復も同時に可能とされる。しかし、SPONKに対して骨軟骨移植を行った術後理学療法の詳細な報告はない。今回、SPONKに対して骨軟骨移植を行った、8症例の術後1年間の膝機能と理学療法について報告する。【対象と方法】膝SPONKに対する骨軟骨移植術を行った8例8膝(腰野分類StageⅢ:4例、Ⅳ:4例)を対象とした。男性4例、女性4例で手術時平均年齢は53.5歳であった。膝機能の評価項目としては、膝伸展筋力、膝屈曲ROM、疼痛はNumeric Rating Scale(以下:NRS )およびJapanese Knee Osteoarthritis Measure(以下、JKOM:最良値が25点、最悪値が150点)の4評価項目を、術前、術後2週、1、3、6ヶ月および1年で評価した。JKOMは全荷重可能となる術後3ヶ月以降の値とした。膝伸展筋力はハンドヘルドダイナモメーター(Tas F-1,アニマ社製)を使用し、端坐位の膝屈曲90度位で下腿遠位部にパッドを当て、5秒間の最大努力による伸展運動を2回行いその平均値を体重で除した値とした。理学療法プログラムは移植骨軟骨の部位・範囲に注意して荷重時期・運動角度を設定して実施した。荷重時期は移植部位により異なるが術後3~4週で部分荷重開始し、術後5~7週で全荷重とした。評価と治療は同一療法士がおこなった。【説明と同意】本研究は、ヘルシンキ宣言に基づき、対象者には本研究の趣旨を口頭および書面で説明し同意を得た。【結果】膝伸展筋力は、術前が平均3.6N/kg(健側比68%)が術後3ヶ月で4.7N/kg(健側比85%)と改善した。膝屈曲ROMは、術前平均135度が術後3ヶ月で146度と健側と同等まで回復した。膝疼痛は、術前NRSの平均7.5 点が術後3ヶ月で0.7点と改善した。JKOMは術前の平均79 点が術後3ヶ月で43点、6ヶ月で33点、1年で28点と改善していった。【考察】膝SPONKに対する骨軟骨移植術後の治療成績は比較的良好とされる。中川らはInternational Knee Documentation Committeeにおいて骨軟骨移植後は96%以上がNearly normalであったと報告しており、松末らも術後の16症例において再鏡視下で評価を行った結果すべて良好であったと述べている。ただし、具体的な術前後の膝機能における報告は少ない。今回の結果からは、術後3ヶ月の時点で膝機能の疼痛、屈曲ROM、膝伸展筋力は良好な回復となった。これは、Kurokiらの報告にある骨軟骨移植後の基礎研究において、移植骨軟骨の強度が増す時期が術後3ヶ月からと述べており、それまでは過度な荷重や運動負荷は大きな負担になると考えている。そのため、術後3ヶ月までは移植部位を考慮した筋力強化運動や段階的ROM運動を行ったことで良好な膝機能の獲得が可能であったと考える。JKOMにおいては膝のQOLを評価しているとされ、術後3ヶ月で大きく改善傾向にあるが、さらに1年時まで緩やかに回復しており機能的な回復とQOLの改善は一致していないと推測される。そのため術後は長期的なフォローが必要ではないかと考える。今後は、さらに症例数を増やし、長期的な予後や他疾患との比較などを行いながら有効な理学療法を検討していきたい。【理学療法学研究としての意義】本臨床研究における結果は、膝SPONKに対する骨軟骨移植術後の膝機能回復を目的とした理学療法が有効であることを示唆する。また、長期経過や他疾患と比較することで、さらなる治療期間の短縮や有効な理学療法プログラムの開発に期待ができるのではないかと考える。今後さらなる研究を進めたい。

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© 2013 日本理学療法士協会
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