理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-O-23
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一般口述発表
軽度認知障害を有する高齢者における睡眠と日常身体活動との関連
朴 眩泰島田 裕之牧迫 飛雄馬土井 剛彦堤本 広大上村 一貴李 相侖吉田 大輔阿南 祐也伊藤 忠鈴木 隆雄
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抄録
【はじめに、目的】高齢者において認知機能の低下は、遺伝的要因だけではなく、日常の生活習慣(活動・睡眠など)との関連が報告されている 。近年、認知症や認知機能の低下の予防方法の1 つとして、身体活動を活性化させることの有用性が注目されている。しかしながら, 活動の至適強度や総量については不明なままである。老年学者の有効な公衆衛生勧告を妨げる主要な問題は, これまでほとんどの研究者が主観的なアンケートを用いていることである。認知症予防の観点からも、このような認知症に移行する前段階の比較的軽度の認知機能の低下を的確に把握し、身体活動との関連を検討していくことが必要である。更に、高齢者において、活動により睡眠が改善することが報告されており、特に認知症では、睡眠時呼吸障害、レム睡眠行動障害など様々な睡眠障害が高い頻度で合併するにもかかわらず、MCI高齢者において睡眠と身体活動の関係に関する研究はない。本研究の目的は、MCIを有する高齢者を対象とし、客観的に測定された活動の量・質・パターンと睡眠の関連を検討することである。【方法】分析に用いたデータは国立長寿医療研究センター・老年学社会科学研究センターが実施した高齢者健康増進のための大府研究(OSHPE)に参加した65 歳以上の地域在住高齢者5,104 名のうち、多面的認知機能評価の結果からPeterson らの基準に則りMCIに該当し、本研究への参加の同意が得られた401 名に対して、一般生態的特性、睡眠ならび日常身体活動調査を行い、すべてのデータが得られた318 名(平均年齢71.2 ± 4.6 歳、女性168 名) を本研究の対象とした。身体活動の調査はアルゴリズムに独自の工夫を凝らした(改良を加えた)3 軸加速度センサー内蔵の身体活動計(以下, 体動計)を用い、2 週間の身体活動の実態を毎日24 時間連続して調べ、一日の平均歩数と平均中強度活動時間(安静時代謝の3 倍以上)を算出した。睡眠障害の評価にはピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)の日本語版が用いられ、睡眠の質(C1)、入眠潜時(C2)、睡眠時間(C3)、睡眠効率(C4)、睡眠困難(C5)、睡眠薬の使用(C6)、日常生活における障害(C7)に関する下位評価項目が検討された。不眠症と判定するPSQIスコアのカットオフ値は6 ポイントと規定され、スコアが6 以上の対象者は不眠症とした。身体活動の歩数と中強度活動時間、睡眠との関係を調べるために、年齢、性別、疲労、教育歴を補正した偏相関係数を算出した。不眠症の有無と身体活動の関係はT-testを用いた。更に、身体活動は活動の量・質の組合せと睡眠との関係は多層混合モデル(MLM: Multi-level Mixed Models)により効果を検討した。統計学的有意水準はp < 0.05 に設定した。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は国立長寿医療研究センターの倫理・利益相反委員会の承認を得た上で、ヘルシンキ宣言を遵守して実施した。対象者には本研究の主旨・目的を書面および口頭にて説明し、同意を得た。【結果】偏相関分析の結果、身体活動の量と質と入眠潜時(C2)、睡眠薬の使用(C6)、日常生活における障害(C7)は有意な相関が見られた、更に女性では、歩数のほうが中強度活動時間より大きい傾向であった。女性では、不眠障害がない者の歩数(7,43 ± 18211 歩/日)と中強度活動時間(24 ± 6.3 分/日)ともに不眠症を持つものより(5673 ± 941 歩/日かつ14 ± 7.1分/日)有意に高かった。また、MLMモデルにより、睡眠状態が良好なほど,1 日の歩数(x)と1 日の中強度活動時間(y)は相互に有意な関係を示し、相互のバランス(線形係数の傾き)の良いほど強い関係があることが示された(傾きが大きい;r2=0.91 対r2=0.78)。【考察】MCI高齢者の日常身体活動の量(歩数)と質(中強度活動時間)は睡眠の質と有意な関連があり、その傾向は特に女性のほうが大きかった。日常身体活動は一般に男性のほうが女性よりも多いということが先行研究によって示唆されているが、おそらく高齢女性は通常低—中強度の家事や買い物など、男性よりも日中の活動パターンは規則的であり、より密接な関係にあると考えられる。また、男女ともより良好な睡眠状態に関連する身体活動水準は, 歩数>7,000-8,000 歩/日かつ/または中強度活動時間>20 分/日であった。この結果はWHO,CDCの高齢者の身体活動の指針(週150 分(21 分/日)の結果と同程度であった。更に、この関係は中強度活動と歩数の相互関連性があるほど良好な睡眠状態であることが示され、単純に歩数・中強度活動時間のみではなく、適切な活動の量と質の組み合わせが重要であると考えられる。【理学療法学研究としての意義】本研究ではMCIにおける日常身体活動と不眠症の影響を検討した研究結果から、これまでほとんど重視されることのなかった活動のパターンと睡眠障害について研究および理解が進むことを期待したい。
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© 2013 日本理学療法士協会
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