抄録
【目的】今回の研究の目的は、機能向上に特化した短時間型通所介護における1年後の利用者の活動性・身体機能への効果とその効果に影響を与える因子を明らかにすることである。【方法】対象は、機能向上に特化した短時間型通所介護に通所している利用者のうち、1年以上継続的に通所している利用者41名(女性22名・男性19名・年齢72.5±10.1歳)とした。利用者の主な基礎疾患は、脳卒中片麻痺15名、パーキンソン病6名、脊髄小脳変性症1名、脊椎圧迫骨折後4名、変形性膝関節症1名、変形性股関節症1名、大腿骨頚部骨折術後1名、頸部障害3名、腰部障害3名、認知精神機能障害による廃用症候群3名、内部障害による廃用症候群3名であった。また介護度は、要支援1が10名、要支援2が11名、要介護1が7名、要介護2が7名、要介護3が4名、要介護4が2名であった。通所介護では、利用時間を3時間半とし、健康チェック後、前半はウォーミングアップ後、理学療法士が個別に作成した運動プログラムを実施し、後半はレッドコードを使用した集団での運動プログラムを行っている。調査項目として、老研式活動指標、Life-Space Assessment(以下LSA)、機能的自立度評価(以下FIM)、転倒自己効力感、棒反応時間、握力、Functional reach test(FRT)、開眼片脚立位時間(以下OFS)、5m最大歩行時間、5m通常歩行時間、連続歩行距離、Timed Up & Go test(TUG)の調査を行った。各項目について、利用開始時から1年後の変化をウィルコクソンの符号付順位和検定を用いて比較した。また、利用効果に影響する因子を検討するために、年齢、性別、基礎疾患、利用頻度、介護度で、各項目の向上率・量の比較を行った。年齢についてはピアソン相関係数を用いて相関分析を行った。性別については男女、介護度については要支援(21名)と要介護(20名)、利用頻度については1回群(20名)と2回以上群(21名)の2群に分け、ウィルコクソンの順位和検定を用いて比較を行った。基礎疾患については、1.骨関節疾患(13名)、2.脳血管障害(15名)、3.進行性の神経筋疾患(7名)、4.その他(6名)に郡分けし、クラスカル・ウォリス検定後、Steel-Dwassの多重比較にて比較を行った。いずれも有意水準は5%未満とした。【説明と同意】当調査を行うに当たり、書面にて説明と同意を得ている。【結果】利用後12カ月後の変化について、老研式活動指標、LSA、FIM、転倒自己効力感、棒反応時間、片脚立位時間(p<0.05)、FRT、5m最大歩行時間、5m通常歩行時間、TUG、連続歩行距離(p<0.01)に有意な向上効果がみられた。利用効果に影響する因子について、年齢では、握力の向上率との間に有意(p<0.05)な負の相関がみられた。利用頻度では、握力の向上率について、1回群よりも2回以上群の方が有意に高かった。介護度では、FIMの向上量について、要支援より要介護の方が有意(p<0.05)に大きかった。基礎疾患との関係では、5m最大歩行時間の向上率について、3.進行性の神経筋疾患よりも1.骨関節疾患の方が(p<0.05)、また5m通常歩行時間の向上率は、3.進行性の神経筋疾患よりも1.骨関節疾患(p<0.01)および2.脳血管障害(p<0.05)の方が有意に高くなっていた。片脚立位時間の向上率についても、3.進行性の神経筋疾患よりも1.骨関節疾患(p<0.05)および2.脳血管障害(p<0.01)の方が有意に高くなっていた。【考察】今回の調査から、機能向上に特化した短時間型通所介護における12カ月後の利用効果について、敏速性、バランス機能を向上させ、歩行移動能力、複合的動作能力が向上し、動作遂行に対する自信が高まって、活動範囲が広がり、日常生活活動能力および生活機能が向上していることが確かめられた。利用者の利用開始までの在宅生活において、保有する機能を十分に発揮した活動がなされずに生じた廃用性の機能低下が改善したことが推察された。利用効果に影響を与える因子の検討では、全身の筋力との相関が高い握力の向上に、年齢と利用頻度が関連していることが示された。利用頻度については、週1回よりもトレーニング頻度として推奨されている週2,3回の方が効果的であることが示された。また介護度の高い者ほど、利用により日常生活活動能力が向上しやすいことが示された。基礎疾患による利用効果の差は歩行能力と片脚立位時間で現れやすく、その向上効果は骨関節疾患で高く、進行性の神経筋疾患で低くなるようであった。今後も継続的に利用効果を確認し、さらなる長期的な効果を示していく必要があると考える。【理学療法学研究としての意義】維持期および地域リハビリテーションにおける、理学療法サービスを提供する通所施設の利用効果を示すための基礎データとなる。