理学療法学Supplement
Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 1381
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幼児期の運動能力と運動習慣・生活習慣との関係
運動好きで元気な子どもを育むための予備的研究
瓜谷 大輔榊 彰裕松本 大輔福本 貴彦
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キーワード: 幼児, 運動能力, 習慣
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抄録

【はじめに,目的】文部科学省の報告では,子どもの運動能力は1985年頃をピークに,現在まで低い水準にあるとされている。子どもの運動能力低下の要因として生活習慣の乱れが指摘されており,日本の2歳半の子どもの51%に生活習慣の乱れがあるとも報告されている。そこで本研究の目的は幼児期の運動能力と運動習慣・生活習慣の関係について検討することとした。【方法】対象は某県某市内の保育園2園と幼稚園1園に通っている年長児131人(男児69人,女児62人,平均年齢5.6±0.3歳)と年中児116人(男児67人,女児49人,平均年齢4.6±0.3歳)の計247人とした。測定項目は身長,体重,25m走,テニスボール投げ,立ち幅跳びとした。また保護者の協力を得て,子どもの生活習慣に関するアンケートを行った。25m走,テニスボール投げ,立ち幅跳びの結果は幼児運動能力研究会のMKS幼児発達運動検査を用いて最高5点,最低1点の5段階評価を行った。アンケート項目は「運動・スポーツ関係の習い事をしている。」「園以外で運動・スポーツを週に3回以上している。」「園以外で運動・スポーツを1日1時間以上する。」「朝食を毎日欠かさず食べる。」「1日の睡眠時間が8時間以上である。」「1日のTV・ゲームが2時間未満である。」「保護者自身が現在,定期的な運動をしている。」の7項目とした。回答は「はい」「いいえ」の2択とした。対象者は運動能力3項目がすべて3点以上の者を高得点群,それ以外の者を低得点群とした。アンケート結果はカイ二乗検定を用いて2群間で比較した。また運動能力を従属変数とし(低得点群=0,高得点群=1),性別(男児=0,女児=1),年齢,身長,体重,アンケートの回答(いいえ=0,はい=1)を独立変数として多重ロジスティック回帰分析による解析を行った。有意水準は5%未満とした。統計ソフトはIBM SPSS Statistics 20を使用した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は某大学研究倫理委員会の承認を得て実施した。研究参加の同意は園としての意思表明として各園の園長から書面への署名による同意を得た。そのうえでデータの使用については各園の教員,保育士から保護者に対して説明を行い,アンケートの回収によって同意が得られたもののデータを使用した。【結果】高得点群は177人(男児102人,女児75人),低得点群70人(男児34人,女児36人)であった。カイ二乗検定による運動能力と各アンケート結果の関係については「1日の睡眠時間が8時間以上である」という項目の「はい」という回答が低得点群で80.0%(14名)に対して,高得点群では89.3%(158名)と有意に高い割合を示した(p<0.05)。その他のアンケート項目に2群間で有意な回答の差を認めた項目はなかった。多重ロジスティック回帰分析でも運動能力に関連する要因として「1日の睡眠時間が8時間以上である」が選択された(オッズ比2.48,95%信頼区間1.05-5.89,p<0.05)。【考察】1日の睡眠時間が8時間以上である幼児は,そうでない幼児に比べ運動能力検査の結果が高得点である子どもが有意に多かった。睡眠時間の減少は日中の眠気や易疲労,成長の遅れ,食欲不振,注意・集中力の低下など様々な悪影響を身体に与える。これら様々な要因の悪影響から外遊びなど日中の活動量が低下するのではないかと考えられる。そして活動量が低下することで運動・スポーツや外遊びにかかわる時間や頻度が減少し,幼児期の運動能力の低下につながっていると考えられる。子どもの睡眠習慣は両親の睡眠習慣に相関があることや幼児期・学童初期は周りの大人に影響を受けやすいという報告があることから,睡眠など生活習慣の改善には子どもだけでなく両親の生活習慣が強く影響し,それに対する啓蒙が重要であると考えられた。本研究では運動能力と運動習慣に関するアンケート結果に有意な関係は見られなかったことから幼児期では運動習慣と運動能力の関連は小さいことが示唆された。筋力・持久力などの運動能力は思春期以降に向上しやすいことが報告されており,今回測定した項目の持つ特性も幼児期には運動習慣との関連性がみられにくい可能性が考えられた。【理学療法学研究としての意義】幼児期の運動習慣や運動の好き嫌いは児童期以降の運動機能の基礎を形成するのに重要であり,ひいては成人以降の運動に対する姿勢に関与していると言われており,長期的な疾病・障害予防の視点から重要なテーマである。障害者や高齢者に関わることが多い理学療法士であるが,予防的な活動や幅広い年齢層を対象としていくこと,また本研究はNPO法人との共同事業を通じて行ったが,行政や各種団体との連携においても我々の持つ専門的知識や技術によって貢献していくことは,社会的にもきわめて重要である。

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© 2014 公益社団法人 日本理学療法士協会
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