日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
症例
拡張型心筋症に合併した急性A型大動脈解離に対し上行大動脈置換術および冠動脈バイパス術を施行し救命した1例
村上 栄司東 健一郎村川 眞司
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2011 年 20 巻 7 号 p. 933-936

詳細
抄録

【背景】拡張型心筋症に合併した急性大動脈解離に対する手術例は極めて稀である.【症例】症例は70歳女性で,5年前から拡張型心筋症の治療中であった.今回,突然の意識消失を認め,急性大動脈解離(DeBakey type II)と診断された.急性大動脈解離発症時の左心室駆出率は26%で,心タンポナーデを合併しており心嚢穿刺を施行した後に緊急手術となった.内膜亀裂部は,右冠動脈口の直上から左冠動脈直上まで大動脈を横断するように存在しており,右冠動脈口を迂回してフェルトによる断端形成を行った.右心室の収縮力低下のため人工心肺からの離脱には,大伏在静脈による右冠動脈へのバイパス術とIABPを要した.術後経過は,縦隔洞炎を合併し長期の集中治療を要したが,独歩退院となった.【結論】拡張型心筋症のため低心機能を呈した急性A型大動脈解離症例に対し,上行大動脈置換に加え冠動脈バイパス術とIABPにより救命した.

著者関連情報

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top