理学療法学Supplement
Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-0594
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口述
足関節固定術ならびに人工足関節全置換術とJSSFスコア
小俣 訓子高倉 義幸福西 梓唄 大輔高倉 義典
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抄録

【はじめに】末期の変形性足関節症や関節リウマチによって,日常生活動作(以下,ADL)に支障を呈す症例に対し,足関節固定術(以下,固定術)や人工足関節全置換術(以下,TAA)が行われる。固定術とTAAの選択は関節の損傷度合,活動性,年齢などにより選択される。どちらも除痛を目的に行われ,加えて固定術は距腿関節を固定することによる関節安定性の獲得,TAAは関節可動性の獲得ができる。しかし,ADLに支障を呈した結果施行された固定術ならびにTAAの術前後において,足関節の機能とADLとの関連性を定量的に評価した先行研究は,我々が踏襲した限り見当たらなかった。足関節の機能を評価する指標として,足関節・後足部判定基準(以下,JSSFスコア)が日本足の外科学会では広く採用されている。JSSFスコアは,疼痛,機能,アライメント点で分けられている。内訳は,疼痛は1項目で自発痛の有無などに対する問診である。機能は7項目あり,活動の制限,連続最大歩行可能距離,路面の状況の3項目が問診,残る4項目は関節可動域(以下,ROM)測定と歩容の評価である。ROM測定で矢状面と後足部を判定し,安定性については前方引出しあるいは内外反ストレスによる不安定性の有無の判定である。歩容から機能における歩容異常と,アライメントの項目は蹠行性足であるか否かの判定である。足関節における詳細な評価であるJSSFスコアを用いることで,術前後のADLを比較できると考えられ,更にADL改善には術前後における理学療法も重要であると考えられる。今回,当クリニックで固定術ならびにTAAを施行した症例に対して,JSSFスコアを用いて術前後の治療成績を比較検討したので報告する。【対象と方法】対象は当クリニックで2011年1月~2014年9月の期間に行った57名62足(固定術33足,TAA29足)である。病名別では変形性足関節症53足,関節リウマチ等9足である。年齢37歳~89歳,平均68.94歳,男性20名(うち2名が両側)女性37名(うち3名が両側)である。JSSFスコアの評価はすべて同一の理学療法士が実施した。術前後を比較するためWilcoxonの符号付順位和検定を用いて検討を行い,有意水準は1%とした。【結果】固定術ならびにTAAとADLとの関係性について,JSSFスコアを用いて術前後で比較した結果,すべての項目において術後で有意に改善が認められた(p<0.01)。さらに詳細分析すると,疼痛の項目と機能の項目である活動の制限,階段や坂道,凸凹な路面での歩行困難さの改善を認めた。また,ROM測定の左右差で評価する項目については,術後でROM向上が認められた。安定性の項目は整形外科的テストによる不安定性の有無であり,こちらも有意な改善が認められた。【考察】本研究では固定術およびTAA後に,足関節の詳細な評価指標として知られているJSSFスコアを用いて,術前後での治療成績を比較検討した。その結果,全ての項目において改善を認めた。変形性足関節症に対する手術療法の一番の目的は除痛と言われているが,疼痛の項目すべてにおいて改善を認めたことは,理学療法介入の効果も考えられる。次に,機能の項目に関しては,ROMと歩行能力に改善が認められた。特にROMに関しては,術施行による疼痛緩和とアライメント修正のみならず,術前後の理学療法介入の重要性が考えられた。すなわち,術前では距骨下関節を主体とした足関節ROM向上と,術後の筋力低下を予防するための足関節周囲の筋力増強を目的とした。術後では軟部組織の柔軟性向上とさらなる筋力増強により足関節の安定性の向上を目指した。その結果,ADLの支障の軽減が達成できたと考える。さらに,機能の項目の階段昇降では術前においてほぼすべての症例がADLで支障があると回答していた。しかし,理学療法介入によるROM獲得と筋力増強に加えて,膝関節と足部運動の連動されるタイミング習得をさせた結果,階段昇降における支障が軽減したと考える。最後にアライメントの項目に関しては,荷重時痛に注意しながら積極的な荷重練習や歩行練習を実施した結果,蹠行性足となり跛行が改善したことが考えられる。以上の結果から足関節の機能とADLを評価できるJSSFスコアの比較からも,術前後における理学療法の重要性が示唆された。しかしながら,スコアの改善は手術によるものか,理学療法介入によるものかの比較検討は,詳細にできておらず今後の課題である。【理学療法学研究としての意義】足関節における詳細な評価としてJSSFスコアの利用によってADLの改善を比較できると考えられた。また,ADL改善には術前後における理学療法も重要であると考えられた。

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© 2015 日本理学療法士協会
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