理学療法学Supplement
Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-B-0062
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早期より歩行練習,職業上の必要動作を積極的に行い,動作能力の改善によって介護職への復職が可能になった腰髄不全損傷者
臼居 直哉長谷川 隆史田中 宏太佳内山 靖
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キーワード: 脊髄損傷, 歩行, 復職
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抄録

【目的】脊髄損傷による不全麻痺は,損傷部位・程度により障害は多岐にわたる。今回,腰髄損傷後,不全対麻痺を呈し,介護職としての職業復帰を目標に理学療法を施行し,復職した症例を経験した。復職を目指し開始から積極的な歩行練習,しゃがみ込み,蹲踞など職業上の必要動作を実施した理学療法プログラムを検証する。【症例提示】受傷1ヶ月の外傷性腰髄損傷者,39歳。介護職。介入前評価は,ASIA Impairment Scale(AIS)C,Neurological Level L1。車いすADLは自立,歩行は歩行器歩行最大介助で2分程度で膝折れが顕著に出現。下肢筋力(右/左)MMTは股関節周囲2/1,膝関節周囲2/1,足関節周囲3/2であった。復職には独歩,しゃがみ込み,蹲踞が必要とニーズがあった。【経過と考察】与えられた介入期間は11週(最初8週は週5日,後3週は週2日)。時間は1日60~90分で,体重免荷式トレッドミル歩行(BWSTT)10分,復職に必要な動作20分,その他プログラムを残り時間で実施。開始時は快適速度でBWSTT,椅子からの立ち上がり動作を中心に実施。開始13日で歩行器歩行,開始19日で院内両ロフストランド杖歩行自立。ロフストランド杖自立後,非免荷で快適歩行より速い速度でトレッドミル歩行を実施。開始1.5ヶ月でT字杖歩行,開始2ヶ月で床へのしゃがみ込み,立ち上がりが自立しT字杖で自宅退院となった。退院後,外来で理学療法を継続し,独歩,走行,蹲踞が可能となり,退院2週後に復職となる。Scivolettohasは,AIS Cの約70%が1年後に屋内歩行が可能となったと報告しているが,機能改善の顕著な受傷後3ヶ月の期間にBWSTTなどの積極的な歩行練習を行ったこと,上肢・体幹機能が温存されていたため,歩行補助具を使用しての歩行による院内移動が早期に確立したことが歩行能力の早期改善に繋がったと推察する。また,復職に必要な動作を集中的に行うことで実動作に必要な動作の獲得と復職への自信に繋がったと推察する。

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© 2015 日本理学療法士協会
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