理学療法学Supplement
Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-A-0181
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小・中学生の投球障害肩・肘症例における下肢タイトネスと棘下筋萎縮の有無について
―投手と野手の違いを比較・検討―
石原 康成, 水池 千尋, 水島 健太郎, 三宅 崇史, 稲葉 将史, 久須美 雄矢, 堀江 翔太, 立原 久義, 橋本 恒, 山本 昌樹
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抄録
【はじめに,目的】小・中学生の投球障害肩・肘症例の中には,棘下筋(以下,ISP)の筋力低下や筋萎縮が生じている例が存在する。これらISPの機能不全は肩甲上腕関節の不安定性に影響をもたらし,永続的な障害の一因となりうるため,早期発見の重要性が高い。しかし,投球障害肩・肘症例の中でもISPの筋力低下や筋萎縮を生じているものと,生じていないものが存在する。そこで今回,小・中学生の投球障害肩・肘症例におけるISPの状態を明らかにすることを目的として,小・中学生の野球選手を対象として調査を行った。併せて投手と投手以外のポジション(以下,野手)で比較し,ISPの状態の差が下肢タイトネスに由来している可能性を考え,これに関しても分析を行ったので,ここに報告する。【方法】対象は,少年野球団,シニアリトル,中学校野球部に所属している小・中学生の男子66名(平均年齢12.7±2.2歳)。肩もしくは肘に疼痛があり病院を受診した障害群は33名(以下S群,平均年齢12.9±2.3歳),で内訳は投手17名,捕手4名,外野手3名,内野手9名であった。投球障害のない対照群は33名(以下C群,平均年齢12.6±2.2歳)で,内訳は投手13名,捕手1名,外野手6名,内野手13名であった。方法は,対象者に対して,ISP筋萎縮の有無,下肢のタイトネスの指標として両側の下肢伸展挙上角度(以下,SLR),股関節内旋角度(以下,Hip IR)を測定した。SLR,Hip IRは投球側と非投球側に分けて検討を行った。ISP筋萎縮の有無の判定は,ISPの触診と視診により行い,投球側上肢と非投球側上肢で比較し判定を行った。統計解析には,ISP筋萎縮の有無についてはχ2検定,2群の測定値の比較には対応のないt検定を用いた。有意水準は5%未満とした。【結果】全体におけるISP筋萎縮は,S群では20名(60.6%),C群では9名(27.2%)であり,有意にS群での割合が高かった。投手におけるISP筋萎縮は,S群17名のうち11名(65%),C群13名のうち3名(23%)で,有意にS群での割合が高かった。野手におけるISP筋萎縮は,S群17名のうち6名(35%),C群13名のうち10名(77%)で,両群間に有意差は認められなかった。投手のSLRは,投球側のISP筋萎縮ありで69.3±9.2°,筋萎縮なしで72.8±8.4°,非投球側の筋萎縮ありで71.1±8.6°,筋萎縮なしで71.6±8.3°と,有意差を認めなかった。Hip IRは投球側の筋萎縮ありで17.9±11.6°,筋萎縮なしで26.3±9.8°,非投球側の筋萎縮ありで17.9±11.9°,筋萎縮なしで26.3±10.1°と,両側Hip IRともに筋萎縮あり群が有意に低値を示した。野手のSLRは,投球側の筋萎縮ありで65.7±11.2°,筋萎縮なしで63.6±11.8°,非投球側の筋萎縮ありで64.3±10.8°,筋萎縮なしで64.2±10.6°と,有意差を認めなかった。Hip IR(投球側)は筋萎縮ありで19.7±7.1°,筋萎縮なし20.1±8.7°,非投球側は筋萎縮ありで20.3±9.7,筋萎縮なしで21.9±9.6°と,有意差を認めなかった。【考察】本調査の結果,小・中学生の投球障害肩・肘症例において,ISP筋萎縮は投手に多いことが明らかとなった。次に,筋萎縮のある選手の下肢のタイトネスは,SLRにおいて投手と野手とで両群間に有意差を認めなかったが,Hip IRにおいて投手が有意に低値を示した。投球動作は全身の運動連鎖から成り立つため,上肢帯だけでなく下肢の柔軟性が必要とされる。投手は野手に比べて投球数が多い。ISPはフォロースルー時に加速された上肢の減速のために遠心性収縮を強いられることが要因として考えられた。ISPの負担を軽減するには,フォロースルー時の上肢の減速に非投球側のHip IRが関わる可能性が考えられる。したがって,股関節の内旋制限のある投手は,投球動作の中で生じるISPへの負担が大きい可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】小・中学生の野球選手に対して潜在的に投球障害肩・肘を評価する方法としてISPの筋萎縮の有無が有用である可能性がある。SLRとHip IRは投球障害の機能的検査法である原テストの検査項目でもある。本研究により小・中学生の投手における投球障害肩・肘症例に関してはSLRよりHip IRを優先的に改善する機能強化やアプローチが投球障害をより早期に改善させる一助になる可能性がある。
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© 2015 日本理学療法士協会
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