理学療法学Supplement
Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P2-C-0412
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がん患者と家族への精神心理的支援における理学療法士の役割
―末期がん患者とその妻への関わりからみえたこと―
吉田 裕一郎佐藤 萌都子荒武 志帆
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抄録
【目的】病状の進行により緩和医療が中心となった時期においても,リハビリテーション(以下,リハビリ)が介入を続けることは,まだできることはあるという患者の精神的支えとなり,希望となる。そのことは寄り添う家族にとっても同じであり,また,患者が亡くなった後にも意味を持つこととなる。患者,家族への精神心理的支援について,末期がん患者とその妻への関わりの中で,若干の知見を得たので報告する。【症例提示】60代男性,妻と2人暮らし。胃癌に対して全摘術,術後化学療法施行。術後2ヵ月のCT所見にて脊椎,骨盤への多発骨転移を認めている。その後も,抗がん剤変更により化学療法が継続されており,化学療法目的に入院。入院中に肝転移による肝機能障害を認め,ADLの低下を来したため理学療法介入となる。【経過と考察】理学療法開始時PS3,BI50/100。患者の離床意欲はあったが全身倦怠感,易疲労性が強く,ベッドサイドでのプログラムを中心に,症状緩和を図りながら動作exなどを実施。身体的側面から患者の意欲を支えることで,患者も毎回リハビリの時間を心待ちにしていた。また,妻が毎日付き添っていたが,苦痛に耐える患者を前に苦慮していたため,トイレ移動時の介助など,具体的な方法を指導することで,妻が積極的に患者のケアに参加できるように配慮した。リハビリは,開始後14日目の患者が亡くなる前日まで介入でき,その時まで,患者は自宅に帰る希望を口にしながら妻の身体を気遣い,そして,妻は献身的に夫を支えた。そのように患者の希望を支え,2人の関係性を保っていくことに,リハビリを通してわずかながらも貢献できたのではないだろうか。そして,この最期の時間が,これから残された妻の支えになっていくことを考えると,グリーフケアという観点からも理学療法士の果たす役割は大きい。今後も,理学療法士としての専門性を活かした精神心理的支援の在り方を考えていきたい。
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© 2015 日本理学療法士協会
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