理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-11-4
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口述演題
経皮的電気刺激治療(TENS)の電極貼付部位が健常人の圧痛閾値に与える影響
片側と反対側と両側刺激の違い
瀧口 述弘庄本 康治
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抄録

【はじめに,目的】経皮的電気刺激治療(TENS)は,従来疼痛のある同側肢に実施していたが,近年では反対側肢や両側肢への刺激で鎮痛するとの報告もある。しかし,これらの刺激部位の違いを比較した報告は少なく,両側肢刺激は反対側肢への刺激によるためか電荷量増加によるものか明らかではない。また,不安や性別が鎮痛に影響を与えるという報告もある。そこで,総電荷量をほぼ同一にした同側肢,両側肢と反対側肢へのTENSの効果を比較し,不安の程度や性別が実験的疼痛に与える影響を明らかにすることを本研究の目的とした。【方法】対象は健常人23名(男:11,女:12)で,State-trait anxiety inventory Y-2(STAIY-2)を測定後,3条件の電極貼付部位(右1ch:右L3/4皮膚分節領域に1ch刺激,右2ch:右同領域に2ch刺激,両側2ch:左右同領域に各1ch刺激)にランダムに割り付け,クロスオーバー化し,更に2条件(左1ch:左同領域に1ch刺激,対照:右同領域に電極貼付のみ)を追加した。ESPURGE(伊藤超短波社製)と,テクノゲル低周波電極パッド5×9cm(積水化成品工業社製)を使用し,周波数は1~250Hz,パルス幅は100μsec,刺激時間は30分,刺激強度は20分まで漸増的に増加した強度を4条件統一した。TENS前,10,20,30分後にCommander Algometry(JTECH MEDICAL社製)で右鵞足の圧痛閾値(PPT)を測定し,PPT変化率を2要因の反復測定分散分析後,shaffer法で補正し多重比較した。性別のPPT変化率に対し分割プロットデザインの分散分析を実施し,STAIY-2とPPT30分後の変化率との関係をpearsonの相関係数で調べた。【結果】TENS前,10,20,30分後のPPTは,右1chで29.2±12.3N,31.9±12.6N,33.6±13.3N,35.8±14.9N,右2chで29.4±11.7N,33.8±13.2N,36.2±14.3N,36.8±15.0N,両側2chで,29.1±11.8N,34.3±14.2N,37.5±15.4N,39.9±17.4N,左1chで,28.6±10.5N,30.3±10.7N,31.5±11.3N,31.9±11.7N,対照では29.1±11.0N,29.1±11.6N,29.1±10.5N,29±11.0Nであった。30分後のPPT変化率は,両側2chは右1ch(p<0.05),右2ch(p<0.05),左1ch(p<0.01),対照(p<0.01)と比べ有意に上昇した。右2chは左1ch(p<0.01),対照(p<0.01)と比べ有意に上昇した。右1chは左1ch(p<0.05),対照(p<0.01)と比べ有意に上昇した。左1chは対照(p<0.01)と比較して有意に上昇した。PPT変化率に性差は認められず,STAIY-2との相関関係も認められなかった。【結論】両側刺激では片側刺激と比べPPTが有意に上昇し,反対側刺激も対照と比べPPTが有意に上昇した。今後は下肢痛を呈する症例への両側刺激の効果や,疼痛を呈する下肢に電極を貼付できない症例への反対側刺激の効果を捉える必要があると考えた。性差は認められなかったが,パワー分析の結果,各17名必要でありサンプル数を増やし検討する必要がある。また,特性不安が高くても刺激強度が強い者はPPT変化率が高かったため,相関しなかったと考えた。

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© 2016 日本理学療法士協会
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