理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-11-5
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口述演題
日本語短縮版Pain Catastrophizing Scaleの信頼性と妥当性の検討
山下 裕西上 智彦壬生 彰田中 克宜
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抄録

【はじめに,目的】痛み体験に対する誇張された否定的な思考(破局的思考)が疼痛の強度や機能障害の予測因子になることが報告され,痛みの破局化の程度を評価する指標として13項目からなるPain Catastrophizing Scale(PCS)が多くの臨床で用いられている。しかし,疼痛患者に対しては破局的思考だけではなく他の質問紙票も合わせて評価する必要があり,可能な限り少ない項目での評価が臨床上必要である。近年,4項目,6項目からなる英語短縮版PCSがそれぞれ開発され,原版PCSと高い相関関係が認められているが,本邦において短縮版の信頼性及び妥当性は検討されていない。そこで今回,日本語短縮版PCSの信頼性と妥当性について検討した。【方法】対象は,疼痛を有する外来患者219名(頸部痛:33名,腰部痛:64名,膝痛:57名,肩部痛:65名,男性68名,女性151名,平均年齢51.6±15.3歳)とした。調査項目はPCS,安静時痛と運動時痛の強度(Visual Analogue Scale:VAS),運動恐怖感尺度(Tampa Scale for Kinesiophobia:TSK),不安・抑うつ尺度(Hospital Anxiety and Depression Scale:HADS)とした。日本語短縮版PCSは,日本語版PCSの13項目(PCS-13)の中から英語版ですでに報告されている問3・6・9・11の4項目(PCS-4),問4・5・6・10・11・13の6項目(PCS-6)を抽出した。統計解析は信頼性の検討としてCronbachのα係数を算出し,妥当性の検討として,PCS-4,PCS-6と各項目の相関係数を算出した。さらに,Rasch解析を用いてPCS-13,PCS-4,PCS-6の適合度指標(infit,outfit)をそれぞれ求めた。有意水準はすべて5%未満とした。【結果】Cronbachのα係数はそれぞれPCS-4(α=0.80),PCS-6(α=0.90)であった。PCS-4,PCS-6の各々の得点は,PCS,安静時VAS,動作時VAS,TSK,HADS(不安)と有意な相関を認めた。さらに,PCS-13では項目7,8でmisfit(不適合)が認められたが,PCS-4,PCS-6ではmisfitは認められなかった。【結論】PCS-4,PCS-6ともに内的整合性,妥当性が認められた。さらに,Rasch解析の結果から,不適合と評価された項目は認められず,日本語短縮版PCSは痛みの破局的思考を評価する指標として信頼性と妥当性のある評価指標であることが示された。従来のPCSの半分以下の項目で破局的思考を評価でき,患者の負担軽減が得られる日本語短縮版PCSにより,破局的思考の評価のさらなる臨床展開が期待される。

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© 2016 日本理学療法士協会
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