理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-14-5
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口述演題
超音波画像診断装置による大腿四頭筋筋厚測定の信頼性
上原 卓也金井 章蒲原 元今泉 史生吉村 和樹江﨑 雅彰
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抄録

【はじめに,目的】超音波画像診断装置(US)を用いた筋厚測定では,プローブの角度や圧によって容易に筋厚が変化するため注意が必要である。しかし,これまでに大腿四頭筋筋厚測定における信頼性を検討している報告は少なく,US使用の熟練度による検討は行われていない。そこで,今回,USによる大腿四頭筋筋厚測定における信頼性について,検者のUSの使用経験を考慮して検討した。【方法】被検者は男性6名,女性4名(10名),計10脚とした。検者はUSの未経験者,複数回使用者,熟練者の男性3名とした。筋厚は汎用超音波画像診断装置Viamo SSA-640(東芝メディカルシステムズ株式会社製)をBモードに設定し,リニア式プローブ(12MHz)を用いて測定し,gain及びdynamic range,撮影深度は統一した。検者はUSを用いて被検者の大腿直筋(RF),中間広筋(VI),外側広筋(VL),内側広筋(VM),内側広筋斜方線維(VMO)の安静背臥位時の筋厚を測定した。測定部位は膝蓋骨と上前腸骨棘を結ぶ線上で,RFとVI,VLは50%近位,VMは膝蓋骨より20%近位,VMOは2cm近位の高さとした。ただし,VLは大腿の中間から外側に大腿円周の10%,VM,VMOは大腿の中間から内側に大腿円周の12.5%の位置で測定した。VMO,VMとVIの筋厚は,各筋膜表面と大腿骨までの距離とし,RFとVLの筋厚は各筋膜表面とVIの筋膜までの距離とした。プローブの向きは大腿骨に対して垂直,プローブと皮膚との圧を最小限となるように指示した。測定は2回行い,1回目と2回目の間は3日以上期間をあけた。統計学的手法は,級内相関係数(ICC(1.1),(2.1))を用いた。【結果】USを用いた大腿四頭筋の筋厚測定について,ICC(1.1)では,RFは未経験者0.80,複数回使用者0.91,熟練者0.89(以下,同順記載),VIは0.93,0.87,0.91,VLは0.92,0.93,0.89,VMは0.83,0.84,0.79,VMOは0.77,0.85,0.77であった。ICC(2.1)ではRFは0.97,VIは0.97,VLは0.89,VMは0.94,VMOは0.82であった。【結論】検者間信頼性は,RF,VI,VMでは優秀であり,VL,VMOでは良好であったため,検者間信頼性は十分にあると考えられた。VL,VMOがRF,VI,VMよりも信頼性が低かった要因は,プローブの向きを斜めにした状態でVL,VM,VMOが測定されるため,プローブの向きが変化しやすく,検者間での誤差が生じたと考えられた。また,VMOはVMに比べ,骨が不明瞭に写りやすく,検者間での誤差が生じたと考えられた。検者内信頼性は,それぞれ0.77以上と高く,経験による差は見られなかった。本研究より,大腿四頭筋の筋厚測定は手順を統一すれば,検者内,検者間とも高い信頼性が得られることが確認された。

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© 2016 日本理学療法士協会
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