理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-MT-14-6
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口述演題
なで肩といかり肩の判定基準に対する一考察(第2報)
木村 淳志西村 勇輝竹嶋 誠
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キーワード: なで肩, いかり肩, 判断基準
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抄録

【はじめに,目的】なで肩やいかり肩は肩凝りや頚肩腕痛などの要因とされている。我々は第50回日本理学療法学術集会で,なで肩といかり肩の判断基準の境界値を検討し報告した。今回,肩型判定のための計測方法を臨床的なものにするため,鎖骨の傾斜角を利用した計測とその判定基準を検討したので報告する。【方法】(1)画像作成。対象は肩に愁訴のない男性20名40肩(平均年齢:26.4±7.6歳)とした。頸から肩への傾きと水平線がなす角(以下,頸肩角)と鎖骨の傾きと水平線がなす角(以下,鎖骨角)を計測するため,上半身裸の安静立位で肩鎖関節(点A),鎖骨近位部の前内上方(点B)と遠位部の前外上方(点C)にマーキングを行い,2台のカメラにより正面と背面から同時に撮影をした。撮影の歪みをなくすため2台のカメラの設置は前額面,矢状面,水平面の傾きを水平計により調整した。撮影中心は正面撮影が胸骨上端,背面が第7頸椎棘突起とした。この20名分の画像を1名につき1枚分をカラー印刷した(以下,写真画像)。(2)見た目での判定。当院の理学療法士3名に20名分の背面の写真画像を渡し,なで肩からいかり肩へと順位づけをしてもらった(以下,傾斜順位)。その順位を参考に,左右の肩をそれぞれ「1:いかり肩」,「2:普通肩」,「3:なで肩」の3段階に判定してもらい,両側とも同じ判定を「いかり肩」,「なで肩」,それ以外は「普通肩」とした。(3)傾斜角の計測。計測は画像解析ソフトImageJを使用した。頸から肩へ傾きの近位側は僧帽筋下行部の形状が多様であり同一のランドマークが取れないため,頸肩線の水平軸の距離を計測,頚部より8分の1遠位を計測点とした(点D)。頸肩角は線ADと水平線,鎖骨角は線BCと水平線のなす角とした。(4)統計分析。傾斜順位はKendallの一致係数(W係数),肩型の分類と頸肩角,鎖骨角の相関関係はSpearmanの順位相関係数,なで肩,いかり肩のカットオフ値の設定はROC曲線により算出した。【結果】いかり肩は7名,普通肩は23名,なで肩は10名であった。傾斜順位はW係数が0.81(p<0.05)と一貫性のあるデータであった。頸肩角は,14.8~33.3°(22.6±4.6°),肩型との相関係数は0.72,鎖骨角は-3.7~17.5°(6.5±5.2°),肩型との相関関係は-0.76であり共に強い相関関係があった。いかり肩となで肩の判定基準となるカットオフ値は,いかり型の頸肩角は19.4°,鎖骨角は9.4°,なで肩の頸肩角は24.1°,鎖骨角は4.8°であった。【結論】肩型の見た目での判断は僧帽筋下行部の形状の影響を受けるが,僧帽筋は形状が多様であるため,ゴニオメーターでの計測は困難だと考える。鎖骨は骨指標点が触知しやすいため鎖骨角の計測が簡易的で信頼性も高い。本研究の結果より,,肩型を判断するには鎖骨角が推奨され,その判断基準は「いかり肩」は10°以上,「普通肩」が5°以上10°未満,「なで肩」が5°未満であることが示唆された。

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© 2016 日本理学療法士協会
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