理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-MT-25-5
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整形外科クリニックでの精神心理学的問題への対応
上薗 紗映佐々木 綱林 光俊仙波 浩幸
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抄録

【はじめに】整形外科クリニックでは,理学療法評価の所見,画像所見などに乏しいものの,本人の訴えなどが強いなどの状況で対応に苦慮するケースも多い。これらケースでは,コンプライアンスが低下している可能性も大きいため,アウトカムも得難い可能性も多いと思われる。しかし,それにどう対応するのが望ましいかを検討する機会を持つことも難しいのが現状である。今回の調査では,整形外科クリニックでの精神心理学的問題への対応に焦点を当て,若干の知見を得たので報告する。【方法】整形外科クリニックに勤務する理学療法士29施設280名に対し,質問紙を送付し,回答を得た。調査内容は,回答者の年齢,性別,理学療法士経験年数,精神的問題の経験の有無,対応方法などである。対応方法は,「傾聴」「自主トレーニングへの移行」「所見との解離を説明」「特に対応しない」「担当変更」「医師の診察へ戻す」「他科を勧める」「その他」を複数回答で選んでいただく形をとり,成功したかどうかについても記載を求めた。回答については,無記名,施設の特定をせず返送していただいた。【結果】回答率は77.1%で218名いからの回答が得られた。回答者の属性は,男性164名,女性54名,経験年数平均5.3±4.4年,平均年齢28.7±5.1歳で,75.5%の理学療法士が精神的問題を経験していた。対応方法としては「傾聴」が最も多く74.1%が選択しており,次いで「自主トレーニングへの移行」(30.1%),「解離を説明する(29.2%)を選択していた。対応の成功率で最も高かったのは,「担当変更」で,約15%の理学療法士が選択しており,悪化したという回答がなかった。手段として約30%の理学療法士が選択していた「自主トレーニングへの移行」と「乖離を説明する」ことについては,20%以上が症状の悪化を経験していることが解った。【考察】整形外科クリニックは,比較的若いスタッフが多い職場であることがうかがえ,精神的問題に多く遭遇していながら,その患者対応に対して検討していく機会は非常に少ないと思われる。また,多くの患者が入れ替わり立ち代わり来室するため,1名の患者に多くの時間を割くことは難しい職場も多い。今回の調査は,患者それぞれのアウトカムを検討していないが,「担当変更」の成功率が高く,「傾聴」に次いでとりやすい手段である「自主トレーニングへの移行」や「所見とのかい離を説明する」という対応方法については,症状悪化のリスクがある方法として慎重に選択する必要があるということが出来る。一方,「担当変更」については,経験年数のより高い理学療法士へ変更されることも多いと予測されるため,成功率が高くなっている可能性もある。そのため今後は経験年数別に検討する必要性がある。

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© 2016 日本理学療法士協会
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