理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-MT-26-1
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人工膝関節全置換術後患者の転帰に影響する術後早期の身体機能因子の検討
白石 明継山本 遼熊代 功児
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抄録

【はじめに,目的】当院ではTKA患者に対して術後在院日数18日を目標としたクリティカルパス(パス)を導入し,自宅退院を目指した理学療法を実施している。しかし,全ての患者がパス通りに自宅退院をしておらず,リハビリテーション継続目的に転院する患者も経験する。TKA患者の自宅退院阻害要因として,年齢,同居家族の有無や実用的な一本杖歩行の獲得等が報告されている。しかし,その多くが退院時の運動機能評価であることや,要因分析のみを行った報告であり,交絡因子を含めて身体機能因子を術後早期より検討した報告はない。そこで本研究の目的は,転帰に影響する術後早期の身体機能因子を交絡因子を含めて検討することである。【方法】対象は当院でTKAを施行した115例,平均年齢は75.2±7.3歳,女性89例,男性26例とし,自宅退院群と転院群に分類した。評価項目として,安静時疼痛,術側膝伸展筋力,術側膝屈曲筋力,術側膝伸展可動域,術側膝屈曲可動域を術後7日目に測定した。また,当院にて7日目のアウトカムとしている歩行器にて80m監視下歩行の達成日数(80m歩行達成日数)を調査した。更に交絡因子として年齢,同居家族の有無,術後在院日数を調査した。統計学的処理は退院群,転院群においてShapiro-Wilk検定を行った。その結果より,対応のないt検定またはMann-Whitney検定を用いて群間比較を行った。その後2群間で有意差を認めた項目を独立変数,転帰を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った。更に交絡因子をブロック1に強制投入し,抽出された独立変数をブロック2に投入し,再度検定を行った。これら全ての検定は有意水準5%未満とした。【結果】転帰は自宅退院群96例,転院群19例であった。Shapiro-Wilk検定の結果,全ての項目で正規分布を認めなかっため,Mann-Whitney検定を行った。2群間に有意差を認めた項目は安静時疼痛,術側膝屈曲筋力,80m歩行達成日数であった。ロジスティック回帰分析の結果,交絡因子を投入せずに安静時疼痛,術側膝屈曲筋力,80m歩行達成日数を検討した結果,安静時疼痛(オッズ比=1.246,p値=0.041),80m歩行達成日数(オッズ比=1.197,p値=0.021)が有意に従属変数を説明した。その後,交絡因子を強制投入し,再度検定を行った結果,80m歩行達成日数(オッズ比=1.179,p値=0.037),年齢(オッズ比=1.126,p値=0.032),同居家族の有無(オッズ比=4.231,p値=0.020)が抽出された。【結論】転帰に影響を及ぼす因子として先行研究で報告されている年齢,同居家族の有無は本研究においても同様に抽出された。しかし,それらの因子を交絡因子として加味しても,80m歩行達成日数は従属変数を説明する結果となった。本研究結果より80m歩行達成日数は転帰に影響する術後早期の重要な身体機能因子と考える。また,理学療法として早期より歩行器歩行の獲得を図っていくことで自宅退院に寄与できる可能性がある。

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© 2016 日本理学療法士協会
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