理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-KS-02-5
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口述演題
肩関節屈曲動作における胸郭形状と肩甲上腕リズムの関係
左右の異なる動態特性に着目して
小林 弘幸石塚 達也西田 直弥茂原 亜由美西江 謙一郎土屋 博貴林 美緒東 理歩柿崎 藤泰
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抄録

【はじめに,目的】肩甲骨は胸郭上に位置するため,胸郭形状の影響を受ける。肩甲上腕リズム(SHR)は上腕骨と肩甲骨の動きの割合が2:1と報告されているが,臨床上,左右で異なる運動が観察される。よって,本研究の目的は胸郭形状の左右差が肩関節屈曲運動に生じるSHRへ与える影響について三次元動作解析装置を用いて検討し,左右異なる運動特性について明確にすることとした。【方法】対象は肩関節や胸郭に既往のない男性11名(平均年齢26.0±3.7歳,平均身長172.7±6.1cm,平均体重67.1±8.5kg,左利き2名)とした。測定機器は三次元動作解析装置VICON-MX(VICON社製)を用いた。測定課題は椅子座位にて,上肢下垂位から6秒間で肩関節屈曲最終域に達するよう指示し,十分に練習を行わせた後,左右で5回ずつ測定した。赤外線反射マーカー貼付位置は,両肩峰後角,両肩甲骨下角,両肩甲棘三角,両烏口突起,両上腕骨内・外側上顆,胸骨頚切痕,剣状突起,第7頸・胸椎棘突起,第3・5胸肋関節それぞれの左右中点(A点),A点を背面に投影した棘突起上の点(B点),A点を通る水平線上に左右等距離に位置する点(C点,各3点)と,両肩峰上に肩甲骨の測定可能なScapula clusterを3点マーカーからなる冶具にて使用し,計38点とした。肩関節屈曲角度(GHA)と肩甲骨角度(STA)は,オイラー角を用いて算出した。STAは,胸郭に対するGHAの0°から120°までを10°間隔に分け,各相における変化量を算出し,胸郭前後径はB-C点間の距離として算出した。統計学的分析は,安静時の胸郭に対するSTA,GHA各相でのSTA変化量,STA最大前傾角度変化量,胸郭前後径の左右比較に対応のあるt検定,胸郭形状左右差とSTA変化量の関係にPearsonの積率相関係数を用い検討した。解析には統計解析ソフトIBM SPSS Statistics 21(IBM社製)を使用し,有意水準はそれぞれ5%未満とした。【結果】安静時の胸郭に対する肩甲骨後傾角度は左側で有意に大きかった(p<0.05)。GHA各相でのSTA変化量について,上方回旋は100°から120°の各相で左側にて,内旋は20°から120°の各相で左側にて,後傾は10°から120°の各相で右側にてそれぞれ有意に大きかった(p<0.05)。STA最大前傾角度変化量は左側にて有意に大きかった(p<0.05)。胸郭前後径は,第3・5胸肋関節レベルで左側にて有意に大きかった(p<0.05)。さらに第3胸肋関節レベルの胸郭形状左右差とSTA変化量は,胸郭形状左右差と肩甲骨前傾最大角度の左右差に正の相関がみられた(r=0.64,p<0.05)。【結論】本研究にてSHRの左右差が存在することが明らかとなった。また,肩関節屈曲初期に見られる肩甲骨前傾は,胸郭前後径の左右差が大きいほど大きくなった。これはsetting phaseにおける上腕骨頭求心位を形成する肩甲骨前傾の動きが代償的に生じたためであると考えられる。よって,胸郭形状の非対称性は上腕骨頭求心力の弱化を招き,機能低下の一要因になることが予測された。

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© 2016 日本理学療法士協会
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