理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-KS-07-3
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電気刺激付与からの筋弛緩動作における大脳皮質運動野の興奮性変化
菅原 憲一田辺 茂雄鈴木 智高米津 亮
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抄録

【はじめに,目的】筋弛緩制御は筋収縮と同様に時間的および出力の精密な調整が要求され,この制御の不調は日常的な活動に大きな影響を及ぼすものである。しかしながら,この筋収縮からの弛緩制御に関わる多様な脳活動を解析する知見は少ない。当研究は,筋弛緩制御を明らかにする目的で随意筋収縮の間に当該筋に電気刺激を付与し筋弛緩の開始を制御する皮質運動野に生じる興奮性動態を経頭蓋磁気刺激法(TMS)を用いた運動誘発電位(MEP)を指標として検討した。【方法】対象は健常成人15名(男性7名,平均年齢21.4±0.91歳)であった。運動課題は座位にて自作の張力測定装置による手関節背屈運動を行った。電気刺激(ES)は日本光電社製isolatorによって行った。刺激電極は,ディズポ電極を用い,主動作筋である右橈側手根伸筋(ECR)に貼付し行った。刺激パラメータは,周波数100Hz,パルス幅100μsとした。刺激強度は,感覚閾値(ST)および運動閾値(MT)の各1.2倍として付与した2群(ST群;N=7,MT群;N=8)を構成した。被験者は手関節背屈を20%最大随意収縮(MVC)で保持している状態から反応音により随意的弛緩を行う課題とした。その際,刺激筋であるECRとその拮抗筋である橈側手根屈筋(FCR)の2筋からTMSによるMEPを同時記録した。TMSのタイミングは反応音後,30,60,90msの3つの区間で行い,時間的な相違による興奮性変化をそれぞれ検討した。なお,control MEPは20%MVC保持時のMEPとし,課題時MEPをその比(MEP比)で示した。TMSはMagstim200(Magstim社製)を使用し,刺激コイルは8字コイルを用いた。MEP計測は誘発筋電計(日本光電社製)を使用した。サンプリング周波数は4kHz,帯域幅は5-2000Hzとした。さらに,反応音から一定随意収縮による筋張力が50%減衰するまでの時間を計測し弛緩に関わる反応時間の指標とした。データ解析は,ST群とMT群のそれぞれにECRとFCRのMEP比におけるES要因(ESあり・なし)と反応音からの時間要因(30,60,90ms)による2元配置分散分析を行った。有意水準は,5%未満とした。【結果】高い強度のESを与えた場合,弛緩直前のECRとFCRを支配する皮質運動野の興奮性は有意に増大を示した。またこの条件における弛緩に関わる反応時間が有意に短縮を示した。さらに,反応音後30msと60msの間に有意差を認めた。【結論】今回の結果から,随意的筋収縮からの弛緩制御を行う期間において,一過性の皮質運動野の興奮性上昇が認められ,またこの現象は弛緩を生じるためのトリガーとなっている可能性が示唆された。さらに,主動作筋への高強度のES付与によりこの一過性の興奮性上昇を賦活し弛緩を生じやすくすることが示唆された。

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© 2016 日本理学療法士協会
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