理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-KS-07-4
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自己運動錯覚を誘導する視覚刺激と末梢神経電気刺激の連合刺激により皮質脊髄路興奮性は持続的に増大する
金子 文成髙橋 良輔柴田 恵理子板口 典弘
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抄録

【はじめに,目的】異なる経路から同期して入力する刺激は,associative stimulation(連合刺激)と呼ばれ,ヒトにおいても長期増強あるいは長期抑制様のHebbian可塑性を誘導することが知られている。Stefanら(2000)は,求心性感覚神経刺激と大脳皮質刺激を連合性ペア刺激として実施することにより,運動誘発電位(MEP)が30分以上増大することを報告した。我々が研究を継続してきた視覚誘導性自己運動錯覚(KiNVIS)は,主に連合線維系経路による入力の結果として皮質脊髄路興奮性が増大するものである。本研究の目的は,KiNVISと投射線維系経路での入力とを連合させることで,持続的な皮質脊髄路興奮性の変化を誘起することの可否について探索することを目的とした。【方法】被験者は,健康な右利きの成人10名とした。連合刺激として,KiNVIS中に末梢神経電気刺激を行った。KiNVISのための視覚刺激には示指の屈曲伸展運動(1周期6秒)の動画を用いた。動画提示用モニタの位置を調整し,被験者が自覚的に自己運動錯覚を知覚することを確認した。末梢神経電気刺激は尺骨神経(前腕遠位部)に行い,刺激強度は感覚閾値の3倍とした。動画の示指が最大屈曲位となるタイミングで刺激した。KiNVISと末梢神経電気刺激の連合刺激は15分間(5分×3セット)行なった。皮質脊髄路興奮性および短潜時皮質内抑制(SICI)の評価として,単発経頭蓋磁気刺激(TMS)および二連発TMSを実施し,MEPを記録した。TMSの実施部位は右第一背側骨間筋(FDI)の最適部位とし,FDIからのMEP,および同時に記録可能であった小指外転筋(ADM)からのMEPを解析した。単発および二連発TMSの試験刺激強度は安静時にFDIから約1mVのMEP振幅が誘発される強度とし,二連発TMSの条件刺激強度は運動時閾値の80%とした。二連発TMSの刺激間隔は2msと3msを用いた。MEPは,連合刺激前に2回,および直後,20,40,60,80分後に記録した。MEPの振幅とSICIは,連合刺激前を基準として変化率を算出した。単発TMSによるMEP振幅は反復測定一元配置分散分析,二連発TMSによるSICIは測定時期と刺激間隔を要因として二元配置分散分析を実施した(P<0.05)。【結果】単発TMSによるMEP振幅は,連合刺激後60分まで有意に増大していた。また,SICIは測定時期と刺激間隔に有意な交互作用があった。しかし,両刺激間隔ともに,SICIの変化は有意でなかった。【結論】我々の用いた連合刺激で,皮質脊髄路興奮性を持続的に増大させられることが示された。この変化が皮質内で生じているかどうかに関する明確な結果は示されていないものの,今後の臨床応用に向けて,さらに研究を継続する価値が示されたと考える。

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© 2016 日本理学療法士協会
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