理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-KS-07-5
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両側下肢一次運動野に対する経頭蓋直流電気刺激は下肢交互運動の学習を促進するか?
立本 将士山口 智史前田 和平荒井 一樹馬場 保人田辺 茂雄近藤 国嗣大高 洋平
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抄録

【はじめに,目的】下肢一次運動野に対する経頭蓋直流電気刺激(以下,tDCS)は,片側足関節における運動学習を促進することが報告されている(Sriraman, et al., 2014)。一方で,下肢運動は歩行をはじめとする両下肢の交互運動が主要であり,中枢神経損傷後には下肢交互運動の再獲得が重要となる。そこで本研究では,両側下肢一次運動野に対してtDCSを適用し,下肢交互運動の学習に及ぼす効果を明らかにすること目的とした。【方法】対象は,健常成人24名(平均年齢24±2歳,女性11名)とし,中枢神経疾患および整形外科疾患の既往がない者とした。研究は,randomized,double-masked,sham-controlled designとした。課題条件は,両側一次運動野への陽極tDCS刺激(両側M1刺激),片側一次運動野への陽極tDCS刺激(片側M1刺激),両側一次運動野への偽tDCS刺激(sham刺激)の3条件とし,被験者を各8名ずつに振り分けた。電極は,両側M1刺激とsham刺激では,陽極電極(5×10 cm)を両側下肢一次運動野上に貼付した。片側M1刺激では,陽極電極(5×5 cm)を右側下肢一次運動野の直上に貼付した。陰極電極(5×7 cm)は,すべての条件で前額中央部に貼付した。刺激強度は2mAとし,学習課題前に15分間実施した。sham刺激は,30秒間のみ刺激を行った。学習課題は,下肢ペダリング運動によるトラッキング課題とした。ペダリング運動には,StrengthErgo240(三菱電機エンジニアリング社製)を使用した。トラッキング課題は,ディスプレイ上の上下曲線に,ペダル回転速度を変動させることで上下に移動するマーカーを追従させる課題とした。学習課題は1施行10分間とし,課題条件前に1回(PRE),その後3回(POST1,2,3)実施した。学習の評価として,トラッキング曲線とマーカー追跡線との誤差面積(以下,RMS値)を算出した。また,介入後のRMS値について,PREのRMS値で除し,学習の変化率を算出した。統計解析は,各条件でのRMS値について,一元配置分散分析および介入前を基準としたDunnett法を用いた。また,学習の変化率について,各条件間の比較には,一元配置分散分析およびBonferroni法で補正した対応のないt検定を用いた。有意水準は5%とした。【結果】各条件におけるRMS値は,全ての条件で有意な主効果を認めた(すべてp<0.001)。多重比較検定の結果,すべての課題条件において,PREと比較して,POST1,2,3のすべてで有意差を認め,運動の学習を認めた(すべてp<0.001)。学習の変化率について,POST2において,有意な主効果を認めた(p<0.05)。その際の変化率は,両側M1刺激が66.7%,片側M1刺激で73.2%,偽刺激は79.5%であり,両側M1刺激と偽刺激との間に有意差を認めた(p<0.05)。POST1と3においては,条件間に有意差を認めなかった。【結論】両側下肢一次運動野に対するtDCSは,偽刺激条件と比較して,下肢交互運動の運動学習を促進させることが明らかになった。

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© 2016 日本理学療法士協会
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