理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-RS-02-3
会議情報

口述演題
慢性閉塞性肺疾患患者の身体活動量に健康統制感は影響する
江越 正次朗堀江 淳白仁田 秀一小柳 泰亮古賀 秀作諸富 誠一宮副 孝茂高橋 浩一郎林 真一郎浅見 豊子荒金 尚子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに,目的】慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の予後規定因子として,身体活動量の影響が示唆されており,近年重要視されている。身体活動量への影響因子として,心理社会的因子の影響としては,自己効力感の影響について報告されている。しかし報告数も少なく,エビデンスには乏しい状況である。中でも,COPD患者の身体活動量と健康統制感についての報告は見当たらず,不明である。そこで,COPD患者の身体活動量への健康統制感への影響について検討した。【方法】対象は,研究の参加に同意が得られた安定期COPD患者32名である。対象の内訳は男性31名,女性1名,平均年齢73.1±8.2歳,1秒率(FEV1.0%)56.8±15.9%であった。GOLD重症度分類は,1期が3名,2期が15名,3期が10名,4期が4名であった。なお,対象の選定においては,重篤な内科的合併症を有する者,歩行など移動能力が肢体機能障害により障害される者,COPD急性増悪から1か月以内の者,理解力が不良な者,測定への同意が得られなかった者は対象から除外した。測定項目は,COPD患者32名に対し,身体活動量の評価として,国際標準化身体活動質問票(IPAQ;International Physical Activity Questionnaire),健康統制感の評価として,日本版Health locus of control(JHLC)尺度を評価した。その他,運動習慣,Scoring Instructions for the Lung Information Needs Questionnaire(LINQ)Version 10,呼吸機能検査,mMRCスケール,Body mass index(BMI)を評価した。統計学的解析は,IPAQの中央値649で2群に分類し,IPAQが649以上群(高活動群)16名と,IPAQが649未満群(低活動群)16名で,各測定項目を分析した。解析は,独立サンプルによるMann-WhitneyのU検定を行い,2群間の関係を分析した。統計解析ソフトはSPSS ver.21.0を使用し,統計学的有意水準は5%とした。【結果】高活動群と低活動群の比較において,JHLCでは,家族の協力(p=0.043),運(p=0.021)の項目において,高活動群が低活動群よりも有意に低値を示し,低活動群よりも家族の協力や運に頼らない考え方を示した。LINQでの病気の理解度では,高活動群が有意に病気の理解度が高かった(p=0.026)。mMRCでは,高活動群で有意に呼吸困難感が弱かった(p=0.001)。運動習慣では,高活動群が有意に運動習慣を獲得していた(p=0.001)。年齢,呼吸機能,BMIには,有意差が認められなかった。【結論】健康統制感の指標であるJHLCにおいて,高活動群が低活動群よりも,自分の健康は,家族の協力や運によって影響を受けるものではないとの考え方が有意に強い傾向を示した。逆に低活動群は,自分の健康は,家族の協力や運などの他者によって影響を受けるとの考え方が有意に強い傾向を示した。以上のことから,COPD患者の身体活動量に健康統制感は影響を及ぼすことが示唆された。よって,身体活動量向上のためには,健康統制感も視野に入れた患者教育が必要である。

著者関連情報
© 2016 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top