理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-RS-02-4
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口述演題
慢性閉塞性肺疾患患者における歩行機能と身体活動との関連性
岩倉 正浩大倉 和貴川越 厚良菅原 慶勇高橋 仁美柏倉 剛本間 光信佐竹 將宏塩谷 隆信
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抄録

【はじめに,目的】慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD)患者では,歩行機能が低下することが明らかとなってきている。これを受けて,歩行機能と運動耐容能や死亡率との関連を検討した研究は散見されるようになってきたが,歩行機能と身体活動(Physical Activity:PA)との関連を検討した研究は見受けられない。しかし,歩行はPAの主な構成要素である日常生活活動や余暇活動の基本となる動作であり,歩行機能とPAは密接に関連することが予測される。そこで,本研究の目的をCOPD患者の歩行機能と身体活動との関連を検討することとした。【方法】対象は,当院へ外来通院している安定期COPD患者19名(年齢:71.1±7.6歳,BMI:21.1±2.8kg/m2,%FEV1:54.3±21.4%)とした。評価項目は歩行機能とPAとした。歩行機能の評価には,3軸加速度計を内蔵した歩行分析計MG-M1110™(LSIメディエンス,東京)を用いた。対象者は,MG-M1110™を装着した状態で,快適歩行速度の条件で10m歩行試験を3回実施した。3回の内,最も速かった一回分を分析対象とした。専用の解析ソフトを用いて,得られた加速度データから歩行機能の指標として以下の項目を算出した。:1ステップ,1ストライドに掛かる時間(Step time;Step-T,Stride time;Stride-T),歩行率,歩幅,歩行速度,Step-Tのばらつき(Step-T SD)。PA評価には,1軸加速度計のLifecorder GS4™(スズケン,東京)を用いた。評価期間は2週間とし,平均歩数をPAとして採用した。統計解析では,歩行機能とPAの関連を検討するために,偏相関分析を実施した。偏相関分析における制御因子は,年齢,身長,体重,%FEV1とした。また,歩行機能がPAに与える影響を検討するために,従属変数を歩数,独立変数を各歩行パターンとした単回帰分析を行った。【結果】偏相関分析において,歩幅,歩行速度は歩数と有意な正の相関を示した(それぞれ,r=.867,p=.001,r=.774,p=.009)。一方,Step-T,Stride-T,歩行率,Step-T SDと歩数との間には有意な相関関係は認められなかった(それぞれ,r=-.543,p=.105,r=-.487,p=.153,r=.486,p=.154,r=-.368,p=.296)。単回帰分析において,歩幅,歩行速度と歩数との間に有意な直線関係が認められた(それぞれ,F=18.784,p=.000,R2=.525,F=14.871,p=.001,R2=.467)。一方,Step-T,Stride-T,歩行率,Step-T SDとPAとの間には有意な直線関係は認められなかった。【結論】COPD患者において,歩幅,歩行速度と歩数の間に有意な正の相関関係,直線関係が認められ,その寄与率は歩幅が約53%,歩行速度が約47%であった。これらの結果から,COPD患者において歩行機能とPAが関連する可能性が示唆された。また,歩行機能の中でも,特に歩幅,歩行速度とPAが強く関連する可能性が示唆された。今後は,歩幅や歩行速度に焦点を当てた運動療法がPAに与える影響を検討していく必要がある。

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© 2016 日本理学療法士協会
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