理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-SN-02-2
会議情報

ポスター
ペルテス病に対する周術期の理学療法―ギプス固定期間別にみた歩行獲得時期の違いについて
西村 美希木下 友美林 真理平島 淑子二見 徹
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに,目的】ペルテス病の治療選択は施設間によって異なるが,保存療法または手術療法どちらも最終的な治療成績は変わらないとの報告もある。両療法ともメリットとデメリットがあるが,長期間の装具装着と免荷期間に抵抗があり手術療法を選択する患者家族も多く,当センターでは積極的に手術療法を行っている。今回,当センターにおけるペルテス病の手術治療後の歩行獲得時期について調査したので報告する。【方法】2012年4月1日~2014年3月31日の3年間に当センター手術療法を行った47例(男児38例,女児9例)を対象に,周術期のリハビリテーションおよび術式による歩行獲得時期の違いについて電子カルテより後方視的に調査を行った。対象児の発症年齢は平均7歳0カ月(4歳1カ月~12歳5カ月),手術時の平均年齢は7歳9カ月(4歳7カ月~14歳5カ月)であった。術式は発症年齢,病期および骨頭壊死の範囲等により大腿骨骨切り術(以下大腿骨群),骨盤骨切り術または両者の併用(以下骨盤群)が選択され,大腿骨群が32例,骨盤群が15例であった。術後は全例にhip spica cast固定が行われた。【結果】平均固定期間は大腿骨群32例で19(6~36)日,骨盤群15例で29(27~34)日であった。ギプス固定終了から端座位開始までの平均期間は大腿骨群1(1~6)日,骨盤群3(1~6)日であった。松葉杖歩行開始時期の平均は大腿骨群6(2~13)日,骨盤群7(4~15)日であった。術後の松葉杖歩行獲得期間の平均は大腿骨群15(2~27)日,骨盤群21(10~36)日で,獲得不可は7例であった。入院期間の平均は大腿骨群54(14~112)日,骨盤群69(42~108)日とギプス固定期間の違い(平均10日)とほぼ同日数であり,両群間における体幹ギプス固定期間の違いによる後療法および松葉杖歩行開始時期に差はなかった。【結論】術後2~4週間は骨格筋の筋萎縮による関節拘縮が生じやすいと言われるが,固定期間中も積極的に自力での体位変換,起居移乗動作の協力,健側下肢およびギプス固定のない患側の足関節の底背屈運動などを行い,固定関節の等尺性の自動運動により関節に生理的な負荷が加わることで関節拘縮の発生を抑制できた可能性が高い。しかし松葉杖歩行の獲得は骨盤群で長期間になることから,健側下肢・体幹筋の筋力および筋持久力は固定期間の違いよる廃用性筋萎縮の影響があると考えた。松葉杖歩行が獲得できなかった7例は,低年齢(5歳未満),他の基礎疾患,発達障害があり,固定期間の違いに関わらず技術的に松葉杖操作の獲得が困難であった。また松葉杖歩行獲得例も多動傾向の強い児も多く,長期化する治療で自己管理による運動制限が遵守できない場合もある。よって入院期間中より退院後の家庭や学校生活を想定した運動指導および本人の意識付けの徹底とともに,基礎疾患の有無や児の性格また退院後の環境調整など複合的に評価し,代替手段も含めた移動手段の検討は今後も必要である。

著者関連情報
© 2016 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top