理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-NV-16-5
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口述演題
回復期脳卒中患者のバランス機能の予後予測式の作成
大橋 悠司藤田 貴昭西山 和貴山本 優一大槻 剛智大平 葉子佐藤 惇史
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抄録

【はじめに,目的】運動機能は知覚機能や認知機能よりも脳卒中患者の機能的な自立に大きく寄与することが報告され,特にバランス機能は歩行やADLと強く関連することが多くの研究により支持されている(Harris, et al., 2005;Mercier, et al., 2001)。そのため,脳卒中患者のバランス機能の予後を早期に予測することは,移動手段やADLの目標や介入の方向性を検討する際に重要な情報となる。これまで脳卒中患者の予後予側は様々な知見が報告されているが,それらはADLや運動機能,在院日数などに着目したものであり,バランス機能の予測を目的とした研究は非常に少ない。そこで本研究の目的は,回復期リハビリテーション(リハ)病棟の脳卒中患者の入院時の評価結果から退院時のバランス能力を予測する回帰式を作成することである。【方法】本研究の後方視的観察研究であり,すでに退院した患者の診療録情報を収集し分析した。対象は脳梗塞または脳出血と診断されA病院回復期リハビリテーション病棟に入院した脳卒中患者100名(男性60名,年齢70.6±13.3歳)とした。解析に用いる項目は,年齢,入院時の発症後期間,入院時および退院時Berg Balance Scale(BBS),入院時Stroke Impairment Assessment Set(SIAS)各項目とした。方法は,まず退院時BBS予測式の作成を目的とした重回帰分析に投入する独立変数を選択するため,退院時BBSと各項目の相関係数を算出した。次に,相関係数が0.6以上であった項目を独立変数,退院時BBSを従属変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を行い,退院時BBSの回帰式を求めた。なお多重共線性の問題を回避するため,独立変数間で相関係数が0.8以上のペアが存在した場合,ペアの一方の変数を分析から除外した。統計処理にはR2.8.1を使用した。【結果】相関分析の結果,退院時BBSとの相関係数が0.6以上であった項目は,入院時のBBS,SIAS下肢近位・股,SIAS下肢近位・膝,垂直性,腹筋力,非麻痺側大腿四頭筋力であった。SIAS下肢近位・股と下肢近位・膝の間の相関係数はrs=0.94であったため,重回帰分析にSIAS下肢近位・股は投入しなかった。重回帰分析の結果,作成された回帰式は退院時BBS=入院時BBS×0.455+入院時SIAS垂直性×5.681+入院時SIAS非麻痺側大腿四頭筋力×5.620-1.734であった。調整済み決定係数は0.78であった。【結論】本研究から,一定の精度を有する回復期リハ病棟退院時のバランス機能を予測する回帰式が得られた。本回帰式は入院時から退院時に必要な環境調整などの想定を可能とし,介入計画の立案に有用な指標になると考えられる。また回帰式の変数に選択された体幹機能や非麻痺側大腿四頭筋は,バランスと強く関連する要因であることが示唆され,これらの機能に対する介入が効果的にバランス向上に作用する可能性が考えられる。

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© 2016 日本理学療法士協会
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