理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-NV-07-5
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急性期脳血管障害患者における摂食嚥下機能に関与する因子の検討
藤野 雄次網本 和深田 和浩高橋 洋介間野 政行森下 元賀牧田 茂高橋 秀寿
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抄録

【はじめに,目的】脳血管障害後の嚥下障害は仮性球麻痺,球麻痺,一側性の大脳病変にわけられ,他の疾患に起因する嚥下障害と比べて病態が多様かつ変化するという特徴をもち,評価の方法や時期によってその特性が異なるとされる。脳血管障害に伴う嚥下障害の予後予測では,嚥下に関わる臨床評価指標や認知機能,高次脳機能などから検討し,誤嚥や肺炎の発症を帰結とする研究が多い。一方,体幹機能の低下が呼吸機能に影響するように,嚥下機能には直接的,間接的に種々の要因が関係する。そこで本研究の目的は,急性期脳血管障害患者に対し,神経症状や体幹機能など多角的な指標から摂食嚥下機能に関与する因子を抽出することとした。【方法】対象は2014年2月から7月に理学療法(PT)と摂食機能療法を処方された急性期の脳梗塞,脳出血患者96例とした。除外基準は神経症状増悪例,両側病変例,発症前の摂食嚥下機能低下例(modified Rankin Scale 4以上),詳細な評価が困難であった例とした。調査項目は,PT開始時のNIH Stroke Scale(NIHSS),離床開始時のTrunk Control Test(TCT),反復唾液嚥下テスト(RSST),急性期病院退院時のFunctional Independent Measure(FIM)とした。解析にはPT開始時NIHSSと離床開始時TCTの下位項目ならびにRSSTを独立変数,急性期病院退院時のFIM食事項目を従属変数とし,重回帰分析(ステップワイズ法)を用いて検討した。【結果】年齢は69.9±12.5歳,PT開始病日は3.1±2.6病日,離床開始病日は4.2±3.4病日,初回NIHSS合計点は7.1±9.0点,離床時TCT合計点は62.5±36.7点,RSSTは2.3±1.3回,退院時FIM食事項目は5.7±2.0点であった。重回帰分析の結果,NIHSS下位項目の意識水準,顔面麻痺,TCT下位項目の座位バランスが抽出され(R2=.669,p<0.01),それぞれの標準化係数(β)は-.205,-.361,.396であった。【結論】急性期脳血管障害患者における退院時の摂食嚥下機能には,意識水準,顔面麻痺,座位バランスの項目が選択された。意識水準と顔面麻痺は摂食に対する認識や意欲など先行期の問題と,咀嚼と食塊形成への影響を示唆し,座位バランスは嚥下や咳嗽を有利とする頚部,体幹の機能および姿勢を反映していると考えられた。RSSTの誤嚥検出における感度・特異度には限界があるとされ,急性期では意識障害や身体機能低下が摂食嚥下障害の重症度を修飾していると思われた。以上から,覚醒度の低下や姿勢保持障害に対する急性期からの積極的な理学療法が摂食嚥下障害の改善に寄与できることが示された。

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© 2016 日本理学療法士協会
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