理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-NV-08-1
会議情報

ポスター
急性期脳卒中患者の座位機能と姿勢定位障碍の関係
~FACTとSCPを使用した後方視的検討~
益子 寛人
著者情報
キーワード: 脳卒中, 座位, 姿勢定位
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】脳卒中では座位に障碍をきたす患者が多く,座位機能低下は予後不良と関連すると言われている。この座位姿勢制御には,身体の位置関係や環境との位置関係を適切に保持する能力である姿勢定位が関わり,脳卒中では姿勢定位障碍(POD)の一つにContraversive Pushing(CP)がある。CPは急性期に多くみられ,座位や立位で身体軸が麻痺側へ傾斜して,自らの非麻痺側上下肢で床や座面を押し,姿勢を正中にしようとする他者の介助に抵抗する現象である。近年,Scale for Contraversive Pushing(SCP)を使用したCPの判定では各下位項目>0(合計1.75以上)がよく使用されている。一方,臨床においてCPやCPと判定されない軽度のPOD(SCP合計0.25以上1.75未満)を呈したPOD患者は,そうでない者と比べて座位機能回復が遅延する事をよく経験する。しかしこれらの患者を対象とした座位機能回復の経過についての報告は少ない。本研究は急性期脳卒中患者の座位機能をPODの有無で比較検討する事とした。【方法】2014年5月~2015年3月に脳卒中の診断で当院へ入院した12例が対象である。内訳はPOD+群6名(男性3名,女性3名,60.4±14.2歳,脳梗塞2名,脳出血4名),POD-群6名(男性3名,女性3名,62.4±12.8歳,脳梗塞2名,脳出血3名,くも膜下出血1名)である。評価項目は,座位機能を臨床的体幹機能検査(FACT),PODをSCPとし,初回離床時期(8.0±2.7病日),急性期病棟の退院時(34.4±7.0病日)に評価した。PODの有無はSCP座位,立位項目いずれかの下位項目で得点した場合(合計0.25以上)に有とした。統計処理は各群における比較をMann-WhitneyのU検定,退院時FACTと初回離床時期SCPの関係をSpearmanの順位相関係数で求めた。有意水準は5%未満とした。【結果】<両群間の比較>退院時FACTのみ有意差を認め(p<0.05),POD+群でスコアが悪い傾向にあった。<相関>退院時FACTと初回離床時期SCPの相関係数はrs=-0.66(p<0.05)で相関関係を認めた。【結論】今回,急性期脳卒中患者でPODが有る者はPODが無い者と比較して,座位機能回復が遅延する可能性がある事が分かった。この結果から,適切な姿勢定位を獲得できない事が,その後の座位姿勢制御に必要な体幹機能の回復に影響を与える可能性がある事が示唆された。本研究の限界は,①座位機能回復の遅延に対しPOD以外の因子が影響を与えた可能性も考えられ,POD因子の貢献度が明確にできない点,②SCPの得点者全例をPOD+群としている為,下位項目別や得点別での検討が出来ていない点であり,今後の検討課題である。本研究の意義は,脳卒中患者の予後不良因子である座位機能回復の経過を,発症間もない離床後早期のPODの有無で差異がある可能性を示した点である。これは急性期脳卒中患者の座位機能の改善において重要な情報を提供すると共に,PODを有する患者への早期理学療法の介入内容を再考させられるものと考えられる。

著者関連情報
© 2016 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top