理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-HT-02-4
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透析運動療法群・透析非運動療法群の1年間の経過について
千﨑 大樹辻野 麻里西野 立樹西川 祐加里和田 直也奥田 成幸武内 康浩神野 卓也鶴崎 清之北川 智美
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抄録

【はじめに,目的】近年,透析中における運動療法の有効性に関する報告が増えている。しかし,それらの報告のほとんどが短期的であり,1年を通して経過を追っている報告はみられない。人工透析患者は多くが半永久的に透析を持続しなければならず,その間の筋力等の身体機能低下が問題となっている。そこで,透析患者に対する運動療法により身体機能が維持・改善するか,長期的な検討が必要である。当院では約2年前より透析中の運動療法を開始した。今回,当院での透析運動療法群・透析非運動療法群の1年間の身体機能の経過について比較した結果を報告する。【方法】対象は週3回当施設で維持透析を受けている外来患者のうち,透析運動療法群5例(男性2例,女性3例:平均70.4歳),透析非運動療法群11例(男性5例,女性6例:平均72.9歳)とした。透析運動療法群の運動療法は,循環動態が安定するとされている穿刺後約1時間後から開始した。内容はストレッチ,チューブトレーニング,自転車エルゴメーター(30分),クールダウンの約1時間程度とした。透析非運動療法群には透析前後や非透析日を含め運動療法は実施しなかった。評価項目は3ヶ月毎の膝伸展筋力,握力,最大一歩幅,10m歩行時間・歩数,大腿周径(0cm・5cm・10cm・15cm),半年毎のTACBUN,クレアチニン産生速度,無機リン,KT/Vの以上10項目とした。透析運動療法群・透析非運動療法群ともに,介入前,3ヶ月,6ヶ月,9ヶ月,12ヶ月の値を比較するために,それぞれの群において,分散分析,Bonferroniの検定を行った。有意水準は5%未満とした。【結果】透析運動療法群において膝伸展筋力のみ,介入前(平均14.74±標準偏差3.73)と比べて,6ヶ月(平均19.61±標準偏差7.55)および9ヶ月(平均18.981±標準偏差7.29)の値が有意に増加していた。その他の比較,透析非運動療法群では有意差を認めなかった。【結論】透析中の運動療法実施群と非運動療法群に対し,1年間の身体機能の経過について研究した。非運動療法群では有意な変化がみられなかったが,運動療法実施群では介入前と比べ6ヶ月および9ヶ月後の膝伸展筋力の増加がみられ,運動療法は有効であることが示された。しかし,12か月後の値には有意差を認めず,透析患者の長期的な効果を継続させるためには,患者の身体機能に合わせた運動療法プログラムの種類・負荷変更の必要性が示唆された。

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© 2016 日本理学療法士協会
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