理学療法学Supplement
Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-YB-10-2
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口述演題
介護予防においてダイナペニア判定は有用である
サルコペニア判定との比較
岩村 真樹金内 雅夫
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抄録
【はじめに,目的】高齢社会において,高齢者の健康寿命の延伸を行うためには早期より身体機能低下を来す可能性のある高齢者を抽出し,予防的な介入を行うことが重要となる。現在筋肉量の低下に焦点を当てたサルコペニアが注目されている。しかし,筋肉量低下よりも筋力低下が早期に生じるとの報告もあり,筋力低下に焦点を当てたダイナペニアという概念も報告されている。そこで,本研究は,地域在住高齢者におけるサルコペニア・ダイナペニアの発生状況の調査を行い,各判定と転倒や日常生活との関連性を検討することを目的とした。【方法】要介護・要支援認定を受けていない地域在住の65歳以上高齢者を対象に各市町村の自治会,老人会,介護予防事業所を通じて本調査への参加を募集し,承諾が得られた93名(男性25名,女性68名,年齢75±5.3歳)を対象とした。身体機能測定は,Bioelectrical Impedance Analysis(BIA)による筋肉量測定,Hand Held Dynamometer(HHD)による膝伸展筋力測定,握力計による握力測定,6m歩行速度測定を行った。質問紙調査は,Mini Nutritional Assessment Short Form(MNA-SF)による栄養状態調査,転倒スコアによる転倒リスク調査,老研式活動能力指標(老研式)による手段的日常生活動作能力(IADL)調査を行った。上記の身体機能測定結果を元にAsia Working Group for Sarcopeniaのアルゴリズムを用いたサルコペニア判定とManiniらの提唱するアルゴリズムを用いたダイナペニア判定を行い,それぞれの判定における栄養状態・転倒リスク・IADLとの関連性について検討を行った。統計解析は各測定結果における男女間の比較をstudent-t検定,女性対象者におけるサルコペニア群(S群)と非サルコペニア群(NS群)間,ダイナペニア群(D群)と非ダイナペニア群(ND群)間の各質問紙調査結果の比較をstudent-t検定,さらに,各質問紙調査結果と身体機能測定結果の関連性の検討を,各質問紙調査結果を従属変数とし,年齢・補整四肢筋肉量(SMI)・膝伸展筋力・握力・歩行速度を独立変数とした重回帰分析にて行った。【結果】S群14名(男性6名,女性8名),D群46名(男性5名,女性41名)であった。女性対象者におけるS群とNS群間とD群とND群間の各質問紙調査の比較では,D群とND群間の転倒スコアと老研式に有意差を認めた(p<0.01)。また,各質問紙調査結果と身体機能測定結果の関連性は,MNA-SFと関連する因子はSMI,転倒スコアと老研式に関連する因子はともに膝伸展筋力であった。【結論】サルコペニアと比較してダイナペニアと判定された対象者を多く認めた。特に女性においてダイナペニアを多く認め,筋力の性差の影響が考えられた。女性対象者の検討においてD群とND群での転倒スコア・老研式の有意差を認め,膝伸展筋力が独立した関連因子として抽出された。以上より,早期からの介護予防対象者の抽出におけるダイナペニア判定の有用性が示唆された。
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© 2016 日本理学療法士協会
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