理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-MT-33-4
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大腿骨顆部骨壊死患者における歩行立脚初期の特性
清水 亮介山田 英司近石 宣宏五味 徳之
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抄録

【はじめに,目的】

膝関節内側コンパートメント障害の代表的疾患の一つに大腿骨顆部骨壊死(膝ON)がある。膝ONの原因は明らかではないが,歩行や日常生活動作の繰り返しによるメカニカルストレスが関与していると考えられ,歩行時の解析は発症要因を検討する有効な手段の一つと言える。正常歩行の立脚初期に起こる膝関節屈曲運動は,衝撃吸収や体重心の振幅減少に重要とされ,メカニカルストレスとの関連は大きい。歩行立脚初期に関する先行研究の多くは,変形性膝関節症(膝OA)を対象とした報告であり,膝ONを対象とした報告は少ない。そこで本研究は,三次元動作解析にて膝ON患者の歩行立脚初期の特性を明らかにし,健常者,膝OA患者との相違を検討した。

【方法】

対象は内側型膝ONと診断された15例15膝(年齢69.5±7.5歳,BMI24.9±3.1kg/m2,以下ON群)とKellgren-Lawrence分類gradeIVと診断された膝OA患者20例20膝(年齢68.9±6.1歳,BMI24.8±6.9kg/m2,以下OA群),健常高齢者7例14膝(年齢73.1±2.8歳,BMI23.8±2.0kg/m2,以下健常群)とした。測定機器は10台の赤外線カメラと床反力計(AMTI社製)4枚で構成された三次元動作解析装置VICON MX(vicon Motion System社製)を用いた。運動課題は通常歩行とし,快適歩行速度で歩行を行った。標点マーカーは,合計41点を貼付した。解析には歩行演算ソフトVISUAL3D(C-motion社製)を用いて,計測データから立脚期を100%に正規化し,立脚初期の膝関節屈伸運動にあたる1%,10%,20%,30%の矢状面における股関節,膝関節,足関節角度を算出し,3歩行周期の平均値を3群間で比較した。なお,統計処理には,R-2.8.1を使用し,多重比較検定を行った。有意水準は5%とした。

【結果】

1)股関節屈曲角度についてON群は,1%,10%ではOA群と比較して有意に伸展位であったが,健常群とは有意差を認めなかった。20%,30%においては,ON群はOA群,健常群の両群ともに有意差を認めなかった。

2)膝関節屈曲角度についてON群は,OA群と比較して1%から30%の全てで有意差を認めなかったが,健常群と比較すると,OA群と同様に20%,30%では有意に伸展位であったが,1%,10%では有意差を認めなかった。

3)足関節背屈角度についてON群は,OA群と比較して1%から30%の全てで有意差を認めなかった。健常群との比較においては,1%,30%で有意に底屈位であったが,10%,20%では有意差を認めなかった。

【結論】

ON群でOA群と差を認めたのは股関節屈曲角度のみであり,立脚初期の歩行特性はOA群と類似していた。しかし,ON群,OA群ともに健常群との比較において,膝関節屈曲角度は少なかったが,股関節と足関節の変化は異なる傾向を示した。このことから,ON群とOA群ともに,立脚初期の膝関節屈曲運動が減少しているが,他関節との関連性は異なっている可能性が考えられた。

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© 2017 日本理学療法士協会
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