抄録
自分が選択したものはより好ましく知覚され,自分が選択していないものはより嫌悪的に知覚される(選択誘発性選好)。本研究では,選択後の再評価(2回目の評定)がこの現象の生起に必須かどうかを調べるため,再評価の過程を必要としない感情プライミング課題を用いた。選択課題では,事前の評定値が等しい2つの商品画像の一方を選択させ,選択課題の前後に感情プライミング課題を行なった。この課題では,選択画像または非選択画像が一瞬提示され,その後にポジティブ単語またはネガティブ単語が提示された。単語の弁別反応時間に関する選択前後の変化量を分析した結果,非選択画像(ネガティブ)の後にポジティブ単語が出た場合は,選択画像(ポジティブ)の後にポジティブ単語が出た場合よりも,選択によって反応が遅延することが示された(感情プライミング効果の生起)。この結果は,選択誘発性選好の生起に再評価の過程は不要であることを示唆する。