理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-RS-01-5
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口述演題
慢性閉塞性肺疾患患者の呼吸困難感と健康統制感との関係
江越 正次朗堀江 淳白仁田 秀一小栁 泰亮古賀 秀作諸富 誠一宮副 孝茂高橋 浩一郎林 真一郎浅見 豊子荒金 尚子
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抄録

【はじめに,目的】

慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者への包括的呼吸リハビリテーションの効果を持続させるためには,継続的な疾患の自己管理が重要であるとされる。しかし,自己管理が十分に行えない者も存在することを考慮すると,呼吸困難感の原因としては,器質的な気流制限以外にも,心理社会的因子が,COPD発症後の疾患の自己管理に影響を及ぼすことが考えられ,その事が呼吸困難感に影響を及ぼしていることも考えられる。しかし,COPDの呼吸困難感と心理社会的因子である健康統制感についての報告は見当たらないため検討した。

【方法】

対象は,研究の参加に同意が得られた安定期COPD患者48名である。対象の内訳は男性47名,女性1名,平均年齢70.3±9.1歳,平均%1秒量(%FEV1.0)56.8±15.9%であった。

測定項目は,呼吸困難感の評価として,mMRCスケール(mMRC),健康統制感の評価として,日本版Health locus of control(JHLC)尺度を用いて評価した。その他,呼吸機能検査,BMI,身体活動量の評価として,国際標準化身体活動質問票(IPAQ),運動習慣,Scoring Instructions for the Lung Information Needs Questionnaire(LINQ)を評価した。

統計学的解析は,mMRCが2以上群(高息切れ群)21名と,mMRCが2未満群(低息切れ群)27名で,各測定項目を分析した。解析は,独立サンプルのt検定または,独立サンプルによるMann-WhitneyのU検定を行い,2群間の関係を分析した。また,JHLCの2群間での比較で,有意差が認められた項目と,各測定項目との関係をpearsonまたはspearmanの相関分析にて解析した。さらに,mMRCを従属変数として,有意差が認められた項目を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析を実施した。統計学的有意水準は5%とした。

【結果】

高息切れ群と低息切れ群の比較において,JHLCでは,運の項目において,高息切れ群が低息切れ群よりも有意に高値を示した。呼吸機能では,%FEV1.0,1秒率において高息切れ群で有意に低値を示し,IPAQでは,高息切れ群で有意に低値を示した。運動習慣では,高息切れ群で有意に運動習慣が低くかった。

JHLCの運と各測定項目では,年齢(r=0.453),LINQの病気の理解度(ρ=0.459)において有意な正の相関関係が認められた。

mMRCでの2群の分類を従属変数,JHLCの運,%FEV1.0,IPAQ,運動習慣を独立変数とした多重ロジスティック回帰分析では,JHLCの運(オッズ比=1.329,95%CI=1.058-1.668)が最も強い影響因子として抽出された。

【結論】

健康統制感の指標であるJHLCにおいて,高息切れ群が低息切れ群よりも,自分の健康は,運によって影響を受けるとの考え方が有意に強い傾向を示した。また,健康は運に影響を受けると考える傾向が強い者ほど,病気の理解度が低い結果となった。以上のことから,COPD患者の呼吸困難感に健康統制感は影響を及ぼすことが示唆され,健康統制感も視野に入れた患者教育が必要である。

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© 2017 日本理学療法士協会
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