理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-RS-10-4
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COPD疑似体験マスクを用いた運動中の安楽肢位の検討
諏訪 愛理赤塚 清矢葉山 静香
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抄録

【はじめに,目的】慢性閉塞性肺疾患(以下,COPD)の症状には,呼吸苦や疲労があり,呼吸苦を軽減させる方法として体幹前傾位をとることが知られている。しかし,COPD患者の安楽姿勢における体幹屈曲角度や,骨盤前傾角度と運動中の呼吸循環応答については明らかでない。そこで,本研究の目的は,運動中の呼吸苦を軽減する肢位について,呼吸循環応答の観点から検討することである。

【方法】対象は,喫煙歴がない健常成人22名(男性9名,女12名)である。条件は,①骨盤・体幹中間位,上肢支持あり(コントロール群),②骨盤・体幹中間位,上肢支持なし(直立支持なし群),③骨盤・体幹中間位,上肢支持あり(直立支持あり群),④骨盤・体幹前傾位,上肢支持あり(前傾支持あり群)の4条件を設定し,自転車エルゴメータでのRamp負荷(20w/分)を行った。測定には,呼気ガス分析装置,心臓運動負荷装置モニタリングシステム,自転車エルゴメータ,電子角度計を用いた。体幹屈曲角度,酸素摂取量(VO2),二酸化炭素排出量(VCO2),呼吸商(R),呼吸数(RR),一回換気量(TV),分時換気量(VE),心拍数(HR),収縮期血圧(SBP),拡張期血圧(DBP),二重積(DP)を計測し,主観的呼吸苦順位を聴取した。本研究では,健常者におけるCOPDの条件設定として,COPD疑似体験マスクを用いた。COPD疑似体験マスクは,内蔵された呼気負荷装置とピンにより呼気時に抵抗がかかり,1秒率がCOPD診断基準である70%以下となる設定である。なお,直立支持なし群,直立支持あり群および前傾支持あり群は,COPD疑似体験マスクを装着し,実施順序はランダムにて日を改めて行った。統計処理は,正規性の検定としてShapiro-Wilk検定を行い,その結果に基づいて反復測定分散分析,対応のあるt-検定,χ2検定を行った。有意水準は5%である。

【結果】体幹前傾角度は,前傾支持あり群がコントロール群,直立支持あり群(p<0.05),直立支持なし群(p<0.01)に比較し高値を示した。安静時の最大値の比較では,VO2,VCO2,R,RR,VE,ETO2がコントロール群と比較して直立支持なし群,直立支持あり群,前傾支持あり群において減少し,ETCO2は増加した(p<0.05)。運動時の最大値の比較は,VO2,VCO2,R,HR,SBP,DP,RR,TV,VE,ETO2がコントロール群と比較して減少し(p<0.05),ETCO2は増加した(p<0.01)。主観的呼吸苦順位では,前傾支持あり群に最も呼吸苦の訴えがあった(p<0.01)。

【結論】健常者におけるCOPD疑似体験マスク使用による安楽肢位は,COPD患者の呼吸苦を軽減させる肢位と異なることが考えられた。

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© 2017 日本理学療法士協会
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