理学療法学Supplement
Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-NV-16-1
会議情報

ポスター
歩行補助具T-Support使用による歩行速度向上が脳卒中片麻痺患者の立脚期における足関節底屈運動および筋活動に及ぼす影響
小松 歩田口 潤智堤 万佐子中谷 知生
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに,目的】

脳卒中片麻痺患者の歩行トレーニングでは,速度を向上させることで連続歩行の距離やエネルギーコストの改善など様々な治療効果があることが明らかとなっている。歩行速度を向上させるには様々な方法があるが,当院では川村義肢株式会社製T-Supportを使用する機会が多い。T-Supportは装着により,歩行速度および前遊脚期に下肢装具に発生する足関節底屈制動モーメント(Second Peak値:SP値)を増大させることが明らかになっている。SP値は前遊脚期における足関節底屈運動の強度を反映するとされているが,その際の底屈筋活動の変化については不明である。今回我々は,自力歩行が可能な脳卒中片麻痺患者を対象として,T-Supportを装用した際のSP値と立脚中期~終期における足関節底屈筋活動の変化を検証したのでここに報告する。

【方法】

対象は当院回復期病棟に入院している初発脳卒中片麻痺患者で,自力での歩行が可能な8名(平均年齢71.1±9.6歳,男性5名,女性3名)とした。対象者の下肢Brunnstrom Recovery Stageは,IIIが3名,IVが3名,Vが1名,VIが1名であった。歩行形態はT字杖使用者が4名,杖を使用しない者が3名,四点杖使用者が1名であった。

下肢装具はGait Solution Designまたは足継手にGait Solutionを備えた金属支柱付短下肢装具を使用し,T-Support装着・未装着下での10m歩行時の所要時間とステップ数,SP値および腓腹筋の筋活動量を計測した。計測にはPacific Supply社製Gait Judge Systemを使用した。なお転倒のリスクがある症例では安全面を配慮し軽く触れる程度の介助を行った。筋電図データは20~250Hzのバンドパスフィルターで処理した後,50msのRMS波形に変換した。腓腹筋の立脚中期~終期における筋活動を1歩行周期の平均値で正規化し,5歩行周期の平均値を算出した。統計処理はWilcoxon符号付順位和検定を用い,有意水準は5%とした。

【結果】

T-Support未装着/装着時における各評価項目の平均値は,10m歩行所要時間が18.5/16.8秒,ステップ数は25.4/23.6歩,SP値は1.7/2.4Nm,腓腹筋の筋活動量は148.5/165.1%であり,全てにおいて統計学的有意差を認めた。

【結論】

先行研究において,健常成人の歩行速度の向上はSP値および立脚中期以降の底屈筋の筋活動量に依存すると考えられている。今回の検証を通し,回復期脳卒中片麻痺患者においてもT-Supportの装着により歩行速度が向上し,その際の足関節底屈運動および立脚中期~終期における腓腹筋の活動量が有意に増大することが明らかとなった。

著者関連情報
© 2017 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top