理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: O-RS-1-1
会議情報

口述発表
COPD急性増悪患者の栄養状態が理学療法に関するアウトカムに与える影響
-転帰時における自立歩行の可否に着目した検討-
小林 孝至松嶋 真哉横山 仁志武市 梨絵渡邉 陽介中田 秀一中茎 篤相川 駿駒瀬 裕子峯下 昌道
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【背景・目的】

COPD患者は代謝亢進などの影響により低栄養に陥りやすく,安定期では低栄養の存在が継時的な身体機能低下と関連すると報告がある.しかし,蛋白異化亢進や食事摂取量低下が助長される急性増悪期において,栄養状態が理学療法に関するアウトカムへ与える影響は明らかでない.そこで本研究はCOPD急性増悪(AECOPD)患者の栄養状態を調査し,転帰時における自立歩行の可否との関連について検討した.

 

【方法または症例】

研究デザインは後方視的観察研究とした(2施設,H27〜H28).対象はAECOPDにて入院し,標準的な理学療法を実施した者とした.また,入院前に自力歩行が不可能であった者は除外した.転帰時における自立歩行の可否はlocomotion FIMを用い6以上を可能と判定した.栄養状態の評価は低栄養の有無(入院時%理想体重<80%)と入院後栄養摂取率(入院直後一週間の平均摂取量/目標摂取量×100)の2つを調査した.統計解析は転帰時における自立歩行の可否を目的変数,低栄養の有無と入院後栄養摂取率を説明変数とした多変量ロジスティック回帰分析を実施した.なお,交絡を調整するため年齢,COPD病期分類,市中肺炎重症度分類を共変量として投入した.

 

【結果】

 対象は全101例(年齢77.4±7.4歳,%一秒量59.1±29.7%)であり, うち21例が転帰時に自立歩行が困難であった.栄養状態に関しては,低栄養を有している者が31例存在し,入院後栄養摂取率は平均78.7±31.7%であった.分析の結果,自立歩行の可否に対する低栄養の有無(無:0,有:1)の調整後オッズ比は3.9(95%信頼区間1.3-11.7, p<0.05), 入院後栄養摂取率(単位変化量10%)の調整後オッズ比は0.7(95%信頼区間0.5-0.9 ,p<0.05)であった.

 

【考察および結論】

AECOPD患者において低栄養の有無や入院後栄養摂取率は,転帰時における自立歩行の可否に関連する可能性が示された. そのため初期評価として栄養状態を評価することは重要であり,栄養摂取率の低い者は早期から栄養療法の併用を検討する必要があると考えた.

 

【倫理的配慮,説明と同意】

倫理的配慮として,当院における臨床試験審査委員会の承認を得た(承認番号:第369号).ヘルシンキ宣言に沿って,すべての対象者のデータを取り扱う際には十分に注意し、検討を行った.

著者関連情報
© 2019 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top