主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
【背景・目的】
原発性肺癌肺切除術後の呼吸リハビリテーション(以下、呼吸リハ)は術後肺合併症予防に有効であるとされ、当院では全例に実施している。2012年に術後呼吸リハ早期終了基準(①自己排痰可能、②酸素投与終了、③胸腔ドレーン抜去、④肩関節可動域制限なし、⑤連続300m以上独歩可能)を設け、従来の画一的介入から術後の呼吸リハ期間の短縮を図ったが、術後合併症の増加は見られなかった。今回、終了基準導入による長期予後への影響を検討した。
【方法】
当院にて原発性肺癌(疑い含む)で肺切除を実施した患者を対象とし、終了基準導入前後の連続100名(未導入群50名、導入群50名)を後方視的に検討した。5年間の追跡不能(12名)、最終病理悪性所見なし(5名)、再手術例(7名)を除外した76名(未導入群39名、導入群37名)について、術後5年までの生存解析を行った。有意基準は5%未満とした。
【結果】
76名(年齢68.8±8.2歳、stageⅠ60名、Ⅱ13名、Ⅲ3名)のうち、5年以内死亡例は12名(15.8%)であった。術後呼吸リハ実施回数は未導入群6.5±2.0回、導入群5.2±2.0回、術後肺合併症、死亡率に終了基準導入前後で差は認めず、ロジスティック重回帰分析では病理病期(Ⅱ期以上対Ⅰ期:ハザード比22.6、95%CI 5.7-114.8)のみ術後5年死亡に関連を認めた(年齢調整済)。
【考察および結論】
術前術後の呼吸リハ介入は術後合併症予防に有効とされるが、術後にリハビリ終了基準を設けて術後リハ期間を終了することは術後リハ日数を短縮し、短期的にも長期予後にも影響を認めなかった。肺癌術前後の呼吸リハ介入について、さらなる効率化・短縮化が進められる可能性が示唆された。今後より多数例での検討が望まれる。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は診療記録から後方視的に実施した。当院公式ホームページ上に診療で得られた臨床データはデータベースに集積し研究に使用する可能性があること、データベースへの集積および臨床研究への使用は拒否することができることを明記している。またデータの取り扱いには個人が特定できないよう十分に配慮した。