主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
【背景および目的】
咳機能の低下した神経筋疾患(NMD)では、機械による咳介助(MI-E)を使用することにより、非侵襲的換気療法の効果を継続するとともに、窒息や誤嚥性肺炎を予防することで胃瘻を回避し、安全に経口摂取を継続するための摂食嚥下マネージメントも報告されている。
今回、進行性のNMD患者においてMI-Eの効果を継続するために、設定条件の変更を必要とした患者について検討する。
【対象方法】
対象は当院に入院中のMI-Eを導入された神経筋疾患患者で、2013年12月から2018年1月までにCough asistE70にてMI-E評価処方のあった患者とした。MI-E条件設定と使用時の呼気流量(MIE-EF)、条件変更理由を診療録より後方視的に調査した。
【結果】
対象患者は57名。平均年齢31.7±9.0(13-48)歳。疾患はデュシェンヌ型筋ジストロフィー:44名、脊髄性筋萎縮症Ⅱ型:3名、その他10名。NPPV使用状況は終日使用44名、睡眠時+日中使用5名、睡眠時のみ使用7名、未使用1名。全例、MI-Eの設定圧は±40cmH2Oで使用していたが、条件変更した患者は38名であった。MI-E条件の変更理由は、MIE-EFが270l/min以下に低下していた者が18名。その他は、分泌物の喀出不十分や肺リクルートメント(LVR)を目的とした設定圧の増加などであった。変更後のMI-E設定圧は±45cmH2O:5名、±50cmH2O:29名、±55cmH2O:3名、±60cmH2O:1名。変更後の平均MIE-EFは272.9±42.9l/min から342.1±38.1l/minに有意に増加していた(p<0.000)。
【考察および結論】
NMDでは進行による肺と胸郭コンプライアンスの低下や上気道狭窄などの影響により、MI-Eの効果が減弱する可能性がある。また、設定圧を増加することにより不随意的に声門閉鎖が起こりMIE-EFが低下する症例も報告されている。定期的なMIE-EFの評価により有効な気道クリアランス能力を維持するための条件変更が必要であった。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は対象患者の倫理面に配慮し、当院の倫理員会の承認を得て行った。