理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-RS-1-5
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ポスター発表
在宅酸素療法と呼吸リハビリテーションによりQOLの改善を認めた準呼吸不全の一症例
大野 一樹髻谷 満山根 主信角田 健大松 峻也川原 一馬千住 秀明
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抄録

【背景・目的】

 我が国における在宅酸素療法(以下,HOT)は,労作時のみ低酸素を呈する患者に対しても広く利用されている.しかし,これらの患者に対する長期酸素療法は,生存率やQOLなどに有意な改善は認めなかったと報告されている.今回,労作時のみ低酸素を呈する慢性閉塞性肺疾患(以下,COPD)患者に対しHOTを導入し,退院後も継続的に呼吸リハビリテーション(以下,呼吸リハ)を行ったことで,QOLの改善を認めた症例を経験した.本症例に対する取り組みについて,若干の考察をふまえ報告する.

 

【方法または症例】

 70歳台,男性.職業は会社顧問.X年にCOPDと診断され,X+5年頃より労作時の呼吸苦が生じ,X+7年にHOT導入目的で当院へ入院となる.主訴は労作時の息切れ,mMRCはgrade2,GOLDの病期分類はIV期であった.血液ガス分析はpH:7.43,PaO2:70.6mmHg,PaCO2:48.1mmHgであり,準呼吸不全を呈していた.

 

【結果】

 2週間のHOT教育を含む呼吸リハを経て,労作時のみ酸素の吸入(2.0L/min)が処方され,自宅退院となった.退院後,初回の外来受診時において,酸素チューブの操作の煩雑さを理由に,自宅内では酸素濃縮装置を使用していないことが判明した.携帯型酸素濃縮装置へデバイスを変更し,操作方法を教育した.その後はアドヒアランスが向上し,正しく酸素デバイスを使用するようになった.また,仕事も今まで通り継続することができた.その結果,導入3ヶ月後にはSGQRのtotal scoreは63.0→51.5,SF-36における身体的健康度は18.4→46.5,精神的健康度は55.6→56,CATは29→15点へと改善を認めた.

 

【考察および結果】

 退院後も呼吸リハを継続して行ったことで,入院中には明らかにできなかった問題を発見でき,迅速な対応が可能であった.その結果,QOLや健康状態の改善を認めた.以上より,労作時のみ低酸素を呈する患者においても,継続的に介入することで,QOLや健康状態の改善などHOTの効果は十分に得られると考える.

 

【倫理的配慮,説明と同意】

学会発表を行うにあたり,ヘルシンキ宣言に基づき個人が特定できないように匿名形式で発表することを本人へ口頭で説明し同意を得た.

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© 2019 日本理学療法士協会
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