主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
【背景・目的】筋強直性ジストロフィー(DM1)患者における脂肪量指数(FMI)および除脂肪量指数(FFMI)などの身体組成は、安静時エネルギー消費量(REE)を変化させる要因であると考えられる。先行研究では、REEと全身のFFMI、Muscular Disability Rating Scale(MIRS)とFMIにそれぞれ有意な正の相関を示し、FMIと呼吸機能には有意な負の相関を示したと報告されている。しかし、REEと身体組成に関する報告はまだ少ない。本研究の目的はDM1患者におけるREEと身体組成の関連を明らかにすることである。
【方法】当院入院中の歩行不能なMIRS5の男性DM1患者10名(年齢50.6±7.5歳、BMI20.5±2kg/m2、CTGリピート数1271±510回、FIM74.6±23.2点、%VCは50±15%)を対象とした。代謝の測定には、携帯型呼気ガス代謝モニター(MetaMax3B:CORTEX社製)を使用した。基礎代謝量(BEE)はHarris-Benedictの式で推定し、REEは安静臥位のエネルギー消費量(EE)とした。身体組成を二重エネルギーX線吸収測定法で得られた全身及び四肢の除脂肪量と脂肪量を身長の二乗で除したFFMIとFMIを算出した値とした。統計解析はREEとBEEの比較を対応のあるT検定、REE及び基礎情報と身体組成の関連をPearsonの相関係数と偏相関係数を用いて検討し、有意水準は5%未満とした。
【結果】REEと全身FMI、全身FFMI、上肢FMI、下肢FMI、上肢FFMI、下肢FFMIに相関関係を認めなかった。REEは1088±200kcal、BEEは1345±229kcalで、BEEと比較してREEは有意に低値を示した(p<0.05)。BMIと上肢FFMI(r=0.74、p<0.05)、下肢FFMI(r=0.89、p<0.01)にそれぞれ有意な正の相関を認めた。CTGリピート数と下肢FMIに有意な負の相関を認めた(r=-0.79、p<0.01)。%VCと全身FFMIに有意な正の相関を認めた(r=0.67、p<0.05)。
【考察および結論】REEとFFMIの関連はなかった。BMIは四肢の骨格筋量を反映し、重症な患者ほど下肢の脂肪萎縮を呈していたことが示唆された。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は対象者に対して、研究の目的と方法、期待される効果、研究協力に関する利益、不利益を伝えたうえで異議申し立て可能であること、また個人の人権擁護においても患者を特定できる情報を一切用いないことを口頭及び紙面にて説明し同意を得た。本研究は、国立病院機構あきた病院倫理審査の承認(No.29-5)を受け、ヘルシンキ宣言に基づいて実施した。