理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-RS-3-58
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ポスター発表
COPD患者における運動時の呼吸循環応答の特徴
田平 一行宮本 直美藤井 宏匡相田 利雄堀江 淳
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抄録

【背景・目的】運動強度(WR)の増加に対する酸素摂取量(VO2)の増加率であるΔVO2/ΔWRは,心不全患者等で低下することが知られており,臨床応用されている.しかしVO2は呼吸,循環,運動筋など各々の影響を受けるため,ΔVO2/ΔWRだけでなく,WRに対する各要因の変化を理解しておくべきと考える.そこで今回は,運動の増加に対する呼吸,循環,骨格筋の各要因の変化率について検討した.

 

【方法】男性COPD患者10名(年齢71.6±8.6歳)を対象に自転車エルゴメータによる10w/minのramp負荷にて漸増負荷試験を実施した.その間,VO2,換気量(VE),呼吸数(RR),心拍数(HR),経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2),外側広筋部の組織酸素飽和度(StO2)を測定し,筋酸素抽出率(MOER=(SpO2-StO2)/SpO2)を算出した.WRの増加に対する変化率を算出し,ピアソンの相関分析を行った.有意水準は5%とした.

 

【結果】ΔVO2/ΔWRは,6.8±1.3ml/min/Wであった.10W当たりの各指標の変化は平均で,VE 2.8L/分,RR1.5回/分,HR 5.0拍/分,MOER 1.5%増加し,SpO2は0.6%低下していたが,個人差が大きかった.最高酸素摂取量は,ΔVO2/ΔWRのみ有意な正の相関を認めた(r=0.75, P<0.01).各指標の関連では,ΔVE/ΔWRとΔSpO2/ΔWRは正の相関傾向(r=0.62, P=0.06)を,ΔVE/ΔWRとΔMOER/ΔWRは負の相関傾向(r=-0.61, P=0.06)を認めた.

 

【考察および結論】ΔVO2/ΔWRは年齢,性別に拘わらず10~11mL/min/Wが正常とされていることから,今回のCOPD患者は低下しており,運動筋への酸素運搬能力等の低下を反映していると考えられた.またΔVE/ΔWRとΔSpO2/ΔWRの関連は,換気を増やせないものほど運動時の低酸素血症を呈する事を表し,ΔVE/ΔWRとΔMOER/ΔWRが負の相関傾向を示したのは,換気制限があるほど骨格筋での酸素抽出によって有酸素エネルギーを得るという代償を表しているものと考えられた.

 

【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,本学倫理委員会の承認後,ヘルシンキ宣言に基づいて被験者に本研究内容および危険性などについて説明し,同意を得てから実施した.

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© 2019 日本理学療法士協会
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