理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-RS-3-59
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ポスター発表
ピークフローメーターで測定される咳嗽力cough peak flowの絶対信頼性と最小可検変化量
吉永 龍史林田 祐醍金柿 夏美手光 文子高野 雅弘
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抄録

【背景および目的】

 cough peak flow(以下,CPF)とは,気道分泌物を喀出するための排痰能力を反映している咳嗽力のことである.CPFは,検者内・検者間信頼性である相対信頼性まで報告されているが,この絶対信頼性および最小可検変化量についてまだ検討した研究は見当たらない.

 本研究は,CPFの絶対信頼性と最小可検変化量を明らかにすることで,呼吸リハビリの介入効果を判定するためのCPF基準値を示すことを目的とした.

 

【方法】

 対象は,当院でリハビリ処方があった高齢者18名であった.基本属性は,男性9名,女性9名,年齢67.0±15.0歳,身長160.2±7.7cm,BMI25.1±5.7kg/m2であった.疾患内訳は,運動器11名,呼吸器4名,脳血管疾患2名および廃用症候群1名であった.適格基準は,嚥下機能に問題がない端座位が自立した症例とした.

 方法は,アセスピークフローメーター成人用にフェイスマスクを接続した.測定肢位は端座位とした.CPFの採用値は,3回測定中の最高値とした.測定方法は,同じ対象者に対して同一検者がCPFを1日1回測定後,3~7日間の間隔を空けて再度1日1回実施の計2回測定する再検査法であった.

 統計処理は,1回目と2回目のCPF値の検者内信頼性について相対信頼性である級内相関係数ICC(1,1)を用い,絶対信頼性にはBland-Altman分析を行った.

 

【結果】

 CPFは,1回目測定が348.9±163.4L/min,2回目が335.0±147.6L/minであった.ICC(1,1)は,0.86(95%信頼区間0.67-0.95)であった.絶対信頼性については,系統誤差を認めなかったため,偶然誤差について検討したところ,最小可検変化量の95%信頼区間(MDC95)は162L/minであった.

 

【考察および結論】

 臨床で呼吸リハビリによるCPF介入効果が162L/min以上を認めることは少ない可能性がある.そのため,介入前後による効果判定の指標とするだけでなく,患者の自己排痰可能なCPFの経過を追っていく事が最小可検変化量を臨床的に有効活用できると考えられた.

 

【倫理的配慮,説明と同意】

すべての対象者には,事前に研究の内容を十分に説明し,書面上で同意を得た.

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© 2019 日本理学療法士協会
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