主催: 日本理学療法士協会
会議名: 第53回日本理学療法学術大会 抄録集
開催日: 2018/07/16 - 2018/12/23
【背景・目的】姿勢の違いにより肺気量位が変化することは知られているが、実際に姿勢の影響を受ける胸郭の換気力学的変化を示す胸郭圧量曲線ついての報告は少ない。また、胸郭圧量曲線の測定が困難であることも、要因の一つであると考えられる。そこで本研究の目的は、背臥位、左側臥位、座位の姿勢の違いによる胸郭圧量曲線を視覚的に評価することである。
【方法】対象は健常成人5名(男性:3名、女性2名:平均年齢31.8±3.1歳)とした。測定姿勢は座位、背臥位、左側臥位とした。肺気量位は総合肺機能検査装置CHESTAC-8900(チェスト社製)を用い、圧測定は圧トランスデューサー(チェスト社製)を用いた。胸郭圧量曲線の測定は気流阻止法を用いて行った。この方法は最大吸気から最大呼気を含む各肺気量位で、対象者の息止めに合わせてシャッターで気流を遮断し測定する方法である。その際、対象者は呼吸を行わず十分リラックスするように指示をした。各姿勢の測定順序はランダムで行い、測定は各姿勢において3回ずつ実施した。肺気量変化は,流量計(チェスト社製)を用いて測定した。胸腔内圧(Ppl)は食道バルーン法にて差圧トランスデューサー(チェスト社製)を用いて測定した。得られた圧及び肺気量変化をサンプリング周波数100HzでPCに取り込み,分析を行った。シャッター閉鎖時の肺気量とPplの散布図から近似曲線を求め、胸郭圧量曲線とした。各対象者の姿勢間での胸郭圧量曲線の視覚的変化について検討した。
【結果】各姿勢での胸郭圧量曲線は、全例が座位、左側臥位、背臥位の順で左方から右方(陰圧から陽圧方向)へ変位していた。
【考察および結論】今回の結果から、3姿勢の中では座位が最も胸腔内圧が陰圧方向のため肺が拡張しやすい姿勢であり、一方で背臥位は最も胸腔内圧が陽圧方向のため肺が縮小しやすい姿勢であることが考えられた。
【倫理的配慮,説明と同意】対象者には本研究の目的と方法について説明し、本研究は甲南女子大学研究倫理委員会の承認を得て実施した。