脳と発達
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症例報告
有熱時けいれん重積後に不可逆性の脳虚血性変化を認めたSturge-Weber症候群typeⅢの1例
坂口 友理後藤 知英三山 佐保子
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2017 年 49 巻 2 号 p. 126-129

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抄録

 9歳時に発症した有熱時けいれん重積後に運動機能が悪化し, 頭部MRIで左側頭葉から後頭葉の皮質および白質に虚血性変化と考えられる不可逆性の萎縮をきたしたSturge-Weber症候群 (SWS) typeⅢの女児を報告する. SWS typeⅢは, 顔面血管腫を伴わない先天性脳軟膜血管腫を特徴とするまれな疾患で, 本症例では左側頭葉・後頭葉・頭頂葉に脳軟膜血管腫が存在していた. SWSにおける病側大脳では皮質静脈還流の阻害により慢性虚血が進行しており, さらにてんかん発作により段階的に虚血が進行するとされる. 本症例では, 慢性虚血が存在していた大脳領域において, 有熱時けいれん重積時に急性虚血が進行したと考えた. 有熱時けいれん予防としてvalproic acidを, また, 脳虚血予防としてaspirinを開始した. 乳児期に複雑部分発作を初発した後, 2歳時以降, 同発作は抗てんかん薬により良好にコントロールされていたが, 1回の有熱時けいれん重積により不可逆的な脳障害を後遺した. SWSでは, 機能予後向上のために生涯にわたってけいれんのコントロールが重要である.

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© 2017 一般社団法人日本小児神経学会
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