理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P-CV-2-5
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ポスター発表
訪問リハビリテーションによるペースメーカ設定変更の提案が運動耐容能改善に寄与した一例
緒方 光小川 めぐみ遠山 恵
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抄録

【背景および目的】心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドラインにおいて、ペースメーカ植込み術(PMI)後の患者の運動耐容能改善のために「運動負荷によるペースメーカ(PM)の最適な心拍数設定も行う必要がある」とされている。しかし、術後に至適な心拍数・心拍応答機能の設定がなされていないことも少なくない。訪問リハビリテーションにてPM設定変更を提案し、運動耐容能が改善した症例を経験したので報告する。

 

【症例】平成28年3月に洞不全症候群に対してPMI(DDD)を施行された83歳の独居女性。自宅は市営団地の5階であり、昇段動作時の呼吸困難感を訴えていた。平成29年8月に、かかりつけ医からの指示にて、週1回の訪問リハビリテーションを開始した。運動耐容能評価とPM設定内容およびPMI後に呼吸困難感が増悪したという訴えから、PM設定変更により運動耐容能の改善が見込めることをPMI施行医に報告し、協議のうえ心拍応答機能等の設定変更を行った。PM設定変更前(2週前)、変更後(3週後)および最終評価(17週後)において、運動耐容能やQOL、昇段動作等を比較した。

 

【結果】変更前、変更後および最終評価において、30秒椅子立ち上がりテスト(11→14→15回)、基本チェックリスト(11→5→4点)、Specific Activity Scale(2.0→3.5→6.0METs)、Euro QOL-5 Dimension(0.649→0.724→1.000)で改善を認めた。5階までの昇段動作を変更前後で比較すると、所要時間、休息時間はそれぞれ56.2%、89.6%短縮し、呼吸困難感の改善を認めた(Borg scale:16→14)。最終評価では所要時間はさらに30.3%短縮し、休憩は不要となり、呼吸困難感はさらに改善した(Borg scale:12)。

 

【考察および結論】PM設定変更による運動耐容能の改善は変更後早期から得られ、その後の訪問リハビリテーション継続は運動耐容能および健康関連QOLの向上に有効であった。PMI後の患者では、生活期においても運動耐容能評価とPM設定の見直しを検討する必要がある。

 

【倫理的配慮,説明と同意】発表演題の趣旨、個人情報保護方針および承諾の自由について対象者へ説明し、書面にて同意を得た。

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© 2019 日本理学療法士協会
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