理学療法学Supplement
Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 21
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座位姿勢における膝関節屈曲角度と座圧の関連性について
松下 一輝畑中 良太今岡 真和岡 健司肥田 光正古井 透
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キーワード: 座圧, 座位姿勢, rysis
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抄録

【はじめに、目的】

 寝たきり患者の臥位姿勢は仙骨部に圧が高くなり、仙骨部は褥瘡の好発部位となる。そのため仙骨部の除圧を目的に座位姿勢がとられる。また除圧を目的とし、褥瘡予防の体圧分散とずれ予防のために股関節、膝関節、足関節を90°にする「90°ルール」に従った座位姿勢がとられる。しかし、座位が不安定な患者は「90°ルール」の適応が困難となる。「90°ルール」が適応できない場合、膝関節の屈曲角度が仙骨部に対し、どのような影響を与えるのかを研究した報告は見当たらない。本研究の目的は、座位姿勢における膝屈曲角度の違いにより仙骨部の座圧がどのように変化するかを検証することである。

【方法】

 対象は、下肢に疾患を有しない健常な成人男性を対象とし、対象者数は10人(年齢21歳)とした。実験前測定項目として、①身長、②体重、③SLR(Straight Leg Rising)角度を測定した。次に、昇降式ベッドにて膝関節60°屈曲位で座位姿位をとり、座圧分布測定システム(住友理工株式会社 SRソフトビジョン数値版)を使用し仙骨部の座圧(以下、座圧)を計測した。続いて膝関節40°屈曲位、膝関節20°屈曲位と順に同様手順にて計測した。測定時の注意点として、目線を水平にし、なるべくリラックスした座位姿勢をとらせた。測定時の足関節は底屈位となるように測定した。また、各膝関節屈曲角度において矢状面の静止画の撮影を行った。画像データをrysis(座位姿勢計測用ソフトウェア)にて、座位姿勢を数値化した。統計解析は、統計ソフトSPSS ver.22を利用し、膝関節屈曲角度と座圧、膝関節屈曲角度と座位姿勢計測値をFriedman検定にて統計を行った。座圧変化量とSLR角度、座圧変化量と頭部線変化量、座圧変化量と上部体幹線変化量、座圧変化量と胸骨線変化量、座圧変化量と骨盤線変化量との関係性について単回帰分析を行った。有意水準5%または1%で行った。

【結果】

 膝関節屈曲角度と座圧に有意な差がみられた。膝関節屈曲角度と上部体幹線、膝関節屈曲角度と胸骨線に有意な差がみられた。その他の座位姿勢計測値との、有意な差は認められなかった。また単回帰分析についても有意な回帰式は得られなかった。 膝関節屈曲角度が鈍角に変化することにより、座圧が高くなった。しかしSLR角度と座圧は関係していないことが分かった。リクライニング式車椅子では膝関節を伸展位にする場合があり、仙骨部への座圧が高くなると考える。また膝関節屈曲角度の変化は、何らかの姿勢制御の働きにより下部体幹ではなく上部体幹に影響を与えると考えられた。

【結論】

 今回、本研究により膝関節屈曲角度と座圧、膝関節屈曲角度と座位姿勢計測値との関連性が明らかとなった。膝関節伸展位での座位は仙骨部の座圧を高め、上部体幹の姿勢に影響することが分かった。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は、大阪河崎リハビリテーション大学の研究倫理員会規則に従い、審査を受けたのち実施した。(承認番号:OKRU29-B154)

ヘルシンキ宣言に基づき、被験者には事前に研究の趣旨ならびに目的・方法を文書及び口頭にて説明を行い、同意が得られれば同意書に署名してもらい実験を行った。

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